長編
□赤紅
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血が、流れた。
神聖な、俺にとっての儀式。
それを、リストカットなんて呼ぶのは知っている。いけないとは、知らない。
ただ、こうして自分が傷つかないと。
愛する人を、手に入れられないアイツを。きっと俺は殺してしまう。
だから、だから。
今はこれで我慢をしなくては。
赤く染まる白いハンカチは俺の物ではなく、愛しいアイツのものだった。
「…土方、さんっ」
ドクドクと溢れる紅い血液を舐めとりながら愛しい名を呼んだ。鉄臭いこの血を、最近は愛しいと想う。
ただ。血を舐めるのがもう当たり前となり。この鉄臭い水に依存すらしている。
気がつけば。手首は傷だらけだった。
「…」
我慢が、できない。己自身にブレーキをかけることができなくなる。
あの人の血をみたい。あの人を傷付けたい。狂ってるとはわかるけど。