暁スウィートルーム

□儚き者
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ザアザア…







今日も空は嘆く。

私達まで暗いどんぞこに浸して…





「弥彦…長門…」




友を呼ぶ声もいつしか雨にかき消されていった…



平和が欲しければ痛みを…



痛みを知れば…






「小南、何をしている」


「…たまには自分の手で折り紙を折ってみようと思って」



「そうか…」




私の手の中で造り出される龍を、彼はただそっと見ていた。



「今日は何もしないのね」


「あぁ。あまり毎日動くとやっかいな連中に見つかるかもしれない」 




そう言って、雨隠れを一望できる雨の中へ身を出す


「小南、たまには空を晴らしてみるか」



「え…」





「今のお前はそんな顔をしている」






偽りの友。
すでに本の感情がない彼。

だけど、ごくたまにかけてくれる優しさ。



「そう…」




私は造り途中の龍を机に置き、彼の隣にそっと立った。




雨が止んだ。



青空が空を満たしている。





「綺麗だわ…」




私はポケットから、紫陽花のタオルをとって、彼の頬についていた雫を取り払った。



「すまないな」



「どうして?」






無表情な彼は私を優しく抱き寄せた。




「本当にどうしたの?ペイン…」



彼の行動に戸惑ってしまう。





「俺は別にお前に痛みを知ってもらうためにこんなことをしている訳ではない」





「えぇそうよ?」





「小南、お前はいつも笑わない」



笑わない…




笑顔…




そんなもの、とうの昔に忘れてしまったわ。



痛みを知りすぎて…



  
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