愛DOLL -risky-
□覚醒
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「っ! はぁぁっ…あーっ!!」
焼け付くような焦燥と快感と恐怖。
男はそっと身を離し、詩緒流の脚の間に立ち見下ろしている。
ビクビクと震える硬直した体と、ぎゅっと閉じられた目元、そこから溢れる涙、大きく酸素を取り込む口元…物欲しげに戦慄く秘部が、恐ろしいほど官能的に男に誘いかけてくる。
「…………これほどの女を…他の男に与えろというのか……? ……馬鹿が…」
見るに耐えなくなった男は、そっと詩緒流の上に身を重ね、己の唇を与えた。
うっすらと目を開けた詩緒流は、嬉々としてそれを受け入れる。
「…ん………御影……御影……は、ぁ……んん………御影…」
熱に浮されたかのように口付けの合間に男を求める詩緒流に、くっと喉の奥で笑いを溢し、男は貪られるがままに唇を与え続けた。
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「お前に触れた男は皆…殺す。いいか詩緒流……お前を抱こうとした男は…分かるな?」
先刻詩緒流が突如“御影”と名を呼んだ男は、横になった自らの上に詩緒流を乗せ、未だ欲しがる唇を与えたまま囁く。
「…御影………」
軽く食むような口付けを繰り返し、時折漏れた唾液を小さな舌で舐め取る詩緒流は、魘されているかのように“御影”という名を繰り返す。
「……世襲の名を出すとはな…時を経て薄められたはずでも、やはり血は水よりも濃いというわけか…………」
ほんの少し前まで怯えて縮こまっていた詩緒流という少女は、先刻までの面影が思い出せないほどの変貌を遂げていた。
勿論、生まれ持った美貌と体躯はそのままだが、その表情には淫らさが翳り、細身の白い体は傍からも分かるほど匂い立つ妖艶さを纏っている。
「…お前は俺のものだ」
愛おしげに髪を梳けば、うっとりとそれに微笑む詩緒流は、音もなく「御影」と唇を震わせた。
そっと重なる唇と、絡み合う視線。
畏怖すら感じさせるその二人の容貌。
「ここでは興が削がれる。行くぞ…」
徐に身を起こし、離れるのも惜しい態で男は詩緒流を抱き上げると、殺伐とした部屋を後にした。