鏡に映る自分の、首の付け根から胸元までに無数に散る赤い痣に、ゾクッと全身が震える。
それが目に入った途端、ジンジンと疼く下半身には、更に力が入らなくなってしまった。
「やだ…どうしよう………」
これが自分と同じ女性から付けられたものだと、誰かに分かってしまったら…
同じ女から受けた愛撫に、不覚にも感じてしまったと知られてしまったら……
もう生きていけない!!!
「…どうしたの?」
突然背後から掛けられた声に、文字通り飛び上がらんばかりに反応してしまう。
「あ、あ、あ…あの、べ、別にっ」
振り返れば、そこには社内でもダントツ人気の部長が立っていた。
部長といえどまだ若く、実力でのし上がったやり手の才色兼備・30歳。
私の余りの慌てように、彼はキレイな顔を少し顰め、ゆっくりと近寄ってきた。
「こんな暗い会議室で…もしかして、泣いてた?」
ほんの少しだけ、労わりを感じたその声のトーンに、じわりとまた涙が湧き上がる。
憧れの男性が自分のことを心配してくれていると思うだけで、こんな状態でもふわりと心が温まった。
心配してくれているなんて、完全な自惚れなのだろうけれど…
だが、普通なら飛び上がってしまうくらい嬉しいシチュエーションにも、完全に幸福感に浸るほどの余裕は、今の私には皆無だった。
「な、なんでもないです! 泣いてなんかいませんから…すみません、ご心配おかけしました!」
そう俯いたまま言って、部長の脇を擦り抜けようとした瞬間。
―――グイ!
腕を大きな手で掴まれ、シャツの胸元を掻き合せていた手を不覚にも解いてしまった。
「あぁっっ!」
絶望の悲鳴が、私の口から溢れ出る。
「…さっき」
ぼそりと呟くような部長の声音には、どこか苦々しさを感じさせる響きがあった。
「………?」
腕を振り払う気力も失った私は、ただ腕を捕らえられたまま立ち尽くす。
部長が次に何を言うのかだけが気になって、俯いたまま私は涙を溢し続けた。