戦場の女神

□第八章
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クリスマス、ケイトを抜いたモビルスーツ部はキャラオケで一晩中歌い続けて、
眠り込んでしまったロマリーを家まで送っていた。

「ケイトが来れなかったのは、残念だったよな」

「ああ」

ゼハートはふと、
秋の地区大会のことを思い出した。

「ケイトとロマリーのオペレートがなければ、
アリーサ・ガンヘイルには勝てなかった」

「ああ。本当、感謝してるよ・・・・・・
感謝っていえばさ、ゼハート」

アセムはつとめてゼハートの前を歩くようにして、
なぜか、ゼハートを見ないようにしていた。

「卒業式の後のダンスパーティ、
あるだろ?」

「ああ。プロム・・・だったか?
うちの田舎にはなかった風習だが」

「ケイトを、誘ってやってくれよ」

さく、とつもり始めた雪を、
アセムが踏みしめる音がした。

「・・・・・・・・・
ケイトも期待してると思うんだ」

「―――――いや」

長い沈黙は、自分にとって何を意味していたのだろう?

「お前が誘えよ、アセム。
お前は優しいヤツだけど、
今は優しくなくていいと思うぞ」

「そうかな」

「そうだ」

それっきり、二人は何も話さなかった。

ただ、雪だけが、戦火の地球圏の中で、
エアポケットのように平和なこのコロニーの何もかも覆い尽くすように、
降り続いていた。
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