存在しない者
□第二話
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桔梗が6つになった年に、父から侍女を付けた方がいいと言われ、両親が選んだ30を越えている女が桔梗の部屋にやって来た。
「初めまして、桔梗姫様、私の名は雨祢(あまね)と申します。こちらにいるのは私の娘である」
「冬梛(ふゆな)です」
冬梛は無表情で桔梗を見る。
桔梗は立ち上がり、冬梛の方へ歩く。
「桔梗姫様・・・?」
桔梗はにこりと笑い、冬梛の前に立つ。
「ねぇ、貴女の瞳に映るのは無機質で面白みの無い景色なの?」
「・・・」
「私が貴女の景色を変えてあげるわ」
桔梗は冬梛に手を差し出す。
雨祢は驚いた表情をして二人を見た。
「・・・」
冬梛は手を伸ばし、桔梗の手を取った。