存在しない者

□第八話
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「冬梛、椿を寝かせてきてもらえるかしら?」

桔梗はぐっすりと眠っている椿を抱き上げ、冬梛に渡す。

「はい」

冬梛は椿を抱く。

冬梛は部屋を出るために襖の方へと足を向ける。

「・・・・・・今までありがとう・・・椿をよろしくね・・・」

「?」

後ろから桔梗の声が聞こえたと思い振り向く。

「何でもないわ」

桔梗はにこりと笑う。

冬梛は桔梗を見た後、椿を抱いて部屋を出て行った。

「十軌久・・・」

桔梗は椿の片割れである十軌久の頭を撫でる。

「貴方は沢山の業を背負うことになってしまう・・・守れない母を赦さないで」

風もないのに水鏡の水が揺れる。

「桔梗」

「・・・侑子」

桔梗は水鏡に近付き、覗く。

そこには、桔梗と同じ漆黒の髪に紅色の瞳の女性が映し出された。
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