novelette

□元気になれる薬
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アジトのソファーの上、珍しく寝ていないカノが手に持った小さなビンを光に翳したりして眺めている
ビンには液体が半分程

…どこと無く楽しそうだ


「何だよ、それ。…にやにやして気持ち悪い」

声をかけるときょとんとした顔がこっちを向き、すぐに面白いもの見つけた、みたいな表情に変わる

「シンタロー君から話し掛けてくるなんて、珍しい!」

どうしたの、なんて聞いてくるこいつには俺の日々の恨みを込めた渾身の罵倒はどうやら効かなかったらしい
本人曰く、シンタロー君が話し掛けてくるの珍しかったからそれで帳消し、だそうだ

あれが渾身の罵倒だったの?という心底驚いたような声は幻聴に違いない

…というか話をはぐらかすな


「で、結局何なんだ、その中に入ってるのは」

「んー、何だろ……元気になれる薬?」

「………」

「何もそこまで引かなくてもいいじゃん!君は僕を何だと思ってるの?」

「あー、悪かった悪かった」

「心の篭らない謝罪をありがとう!…まあいいけどね、別に。シンタロー君にはわからないだろうから」

そう言ってまた視線をビンに戻す
笑ったその顔が自嘲めいて見えたのは気のせいだろうか


「…成分は?」

「気になる?飲みたいの?…ああなるほど、シンタロー君、精彩とか活気みたいなのとは縁がなさそうだもんね」

憐憫を含ませた目がこっちを向く
大方その下でにやにやしてるんだろう

「お前に貰ったものは何が入れられてるかわからないからいらねえ」

「言うと思った。まあ、あげる気なんかないけど」

そう言ってまた視線はビンへ

「…質問に答えろ」


「1が0.02g、6が0.14g、8が0.18g、81が1.16gで計1.5g」

少し間を置いての返答

……へーえ




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