夏目友人帳

□#5 祓い屋
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宿に泊まることになった私たち。
塔子さん達に電話をかけて私は夏目くんや名取さんと’同じ部屋’に泊まることになったのだ。

「君たちは部屋で待っててくれ。
 私は様子を見てくる。
 特に麗華は的場に見つかってはいけないよ」

「は、はい」

暫く夏目くんと部屋で待っていると窓からカタンッと音がした。

夏目くんはその先に居たモノが見えていたけど私は見えなかった。
夏目くんは私を押し入れの中に隠すと一人で隣の窓の方の様子を窺いに行った。

暫く待っていると夏目くんが女の人に髪を掴まれて連れていかれる姿が目に入る。

私はすぐにそれを追いかけた。
けど、何処かへ行ってしまって夏目くんを見つけることは出来なかった。
そして、外に出てしまった事で一番あってはいけない人にあってしまったのだ。

角を曲がった瞬間人にぶつかってしまう。

「す、すみません。」

顔を上げるとそこにいたのは的場さん。

「おや。よく会いますね」

「あ…」

逃げようとした私に放った言葉は

「つかまえろ」

その言葉を合図のように的場さんの式が動き出す。
あっと言う間に身動きが出来ないように捕えられてしまう。

「っ――――!!やだっ!離して!!
 夏目く――――。」

口をふさがれる。
首元を叩かれて意識が薄れる。
あんなに名取さんに注意しろと言われていたのに…。

どうして部屋を飛び出してしまったのだろう…。

―――――――――――――――――
目を覚ますとそこは知らない部屋だった。

「んん…?」

「起きましたか?
 君の声を初めて聞きましたが結構可愛い声を出すのですね」

クスクスと笑われる。

「なっ…!?」

改めて自分の状況を理解すると私は手を紙の様なもので縛られていた。

「おもしろいでしょう?
 その紙。普通の人には見えないんですよ」

どうしよう。
この手が自由にならないと逃げられない。

「どうしてこんなことをするんですか・・・?」

震えた声で尋ねる。

「どうして。ですか。
 そうですね。妖怪の血は術に色々と使えるんですよ。言ってしまえば’エサ’みたいなものです。」

エ・・・サ・・・・・・?
術?
それだけのために妖怪をたくさん殺したって言うの??
ただそれだけのために・・・。

「そんなの・・・」

「これは、人のためになることです。
 人に害を与える妖怪達など、使ったほうがいいと思いませんか?」

’物’
この人からしたら妖怪は只の使える’物’―――――――・・・。

この人・・・・・・・・最低だ。

??

的場さんの手がカップの上をスカッと空振りする。

『ガシャン』

!?

「チッ・・・またやってしまいましたね。」

「目が・・・?」

「見えてはいますよ?
 でも、これだと距離感がつかめないんです。」

「どうしてはずさないんですか?」

「的場家頭首は代々右目を狙われているんです。それに顔にまだ酷い傷があるので・・・・・・・見てみます?」

「え・・・・・・。」

ギシッと音を立てて椅子に寄りかかってくる。
眼帯の部分を少しあげてくる。
目をギュッとつぶる。
こわい・・・・。

「的場」

「今行く。見張ってろ
 先に言っておきますが逃げるなら逃げられなくしますし騒ぐなら騒げなくしますよ?」

的場さんは私のところから退く。
この部屋には私と的場さんの式が一体しか居ない。

この紙をはずせば逃げれるかも・・・。
歯で引っ張ったりしてみるけど全然外れない。
このままじゃ的場さんが戻ってきてしまう。
さっき的場さんが割ったコップの欠片が拾えれば・・・。

ゴクリとつばを飲む。

次の瞬間、式に回し蹴りをかます。
なかなか大変なので失敗するときと成功するときが異なるが今回は成功した。

夏目くんにはスカートではするなといわれていたけど今回ばかりはしょうがない。

後は欠片で紙を破くだけで――――・・・。

『ガチャリ』

うそ!?
もう戻ってきちゃった・・・。
どうしよう・・・。

的場さんが私のほうへ近づいてくる。
だめだ。迷ってなんか居られない。
私は・・・私は・・・

強くならなきゃいけないの!!

足元にある破片を一つ掴む。
括られた腕のまま外に飛び出した。

的場さんの手は私の踵をかする。

まずそこは大丈夫。
でも問題はこの後。飛び降りた場所は2階。
悪い形に落ちれば死ぬ可能性もあるがそれは考えられない。
考えられるとすれば骨折。
確実に足が地上に着かなければ危険だ。

そのまま垂直に落ちていく。
縛られた手のまま外へ飛び出すなんて私も無茶をしたものだ。
きっと夏目くんにすごく怒られるだろう。
でも、私は無事にもどる。
夏目くんのもとへ。
骨折なんかしてられない。
100%の内99%なら、残りの1%を信じていくんだ!
大丈夫!0じゃない!私には・・・
まだチャンスがあるから。

ドスンと足をつける。

「っ・・・!!たぁ〜!!」

足にジーンという痺れが奔る。
あ、それよりもまず手を自由にしないと・・・。
手のひらに握った破片を取ろうとしたとき・・・

「いっ・・・!?」

ずっと手に握ったせいか手の平につうっと赤いスジができる。暫くするとソコから赤い液体がだらだらと出てくる。

ここから的場さんの式が見える。
恐らく私を探しているのだろう。
ビッと手の紙を破片で破く。

今は手が傷ついている。
この手で戦うことなんてできるのだろうか?
万が一かのうしてしまったら大傷になるかもしれないのに・・・。

ガサッと音をたててしまう。
的場さんの式に気付かれた・・・!!

急いで逃げるけど私をあっというまに取り囲んでしまう3体。
もう、回し蹴りしかない・・・。

襲い掛かってきた1体に回し蹴りをくらわす。
相手はふらついただけだったがまた襲い掛かってくる。
もう一度やろうとしたとき、足元がふらつく。
結果上手く足が回らず転んでしまうことに。
そのまま3体は近づいてくる。
手が痛む。もうだめだと思ったその時。

1体の顔の仮面?が一瞬にして割れた。
横から飛んできた拳は2体、3体と倒していく。
私はそのまま抱きしめられる。

「よかった・・・。無事で、よかった。」

その声を聞いて涙が私の頬を濡らす。
うれしかった。その声を聞くだけで。

「夏目くんっ!!」

私は夏目くんに抱きついた。
ぬくもりに包まれる。

私はそのまま夏目くんに部屋まで運ばれた。
そこにはニャンコ先生と名取さんが待っていた。

「大丈夫かい?無事でよかった!」

「ったく、アホウが!おい!ちょっとそこにすわらんか!!」

みんな私を心配してくれたんだと思うと涙が出る。

「だ、大丈夫か!?どこか怪我したとか・・・・・・」

「ううん。大丈夫。でも怖くて凄く怖かったからっ・・・・・」

みんなはその言葉を聞くと暗い顔をした。

「頭おかしいんじゃないのか?的場」

「あぁ、最低だね。高校生の子に。
 なんて大人気ないんだろう」

「そうですね。危ないですね的場さん。頭が」

「あ、あの。皆さん・・・・」

明らかに何か勘違いしている三人に声をかける。

「「「大丈夫だ!次は絶対近づけさせないから・させん!」

三人の意気統合に驚いて座り込む。
そして・・・私たちの闘いが始まるのだった。

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