うたプリ
□かに座の運勢
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「ねぇねぇなまえちゃん!大変だ!!大変だ!!大変なんだよ!!」
「れっ嶺ちゃんっっ!なんだよ!!マジでびっくりしたぁ・・・。」
楽屋の扉を開けると、物凄い勢いで私の元へ駆け寄ってきたのは、寿嶺二25歳である。
そんな慌てている嶺二を見て私は冷静に『大変って何が?』と言葉を返すと、『今週の僕ちんの運勢がね〜!!総合運星ゼロ。健康運星ゼロ。恋愛運星ゼロっっ!』と、まるでこの世の終わりみたいな顔で私に言い寄ってきた。
「えっ・・・?いやぁ〜さすがにそれは無いっしょ〜。」
『あはは』と笑うと、嶺ちゃんは『じゃあ見てみなよ!!』と頬を膨らましながら雑誌を私に突き付けた。それを受け取り見てみると、【かに座:総合運★★★健康運★★★恋愛運★★★】という風に表記されていて、思わず苦笑いを浮かべた。
「あらあら黒星のオンパレード。」
「あらあら、じゃないよ〜!!!どうしよう〜僕今日から一週間の間死ぬのかな!?健康運も無いんじゃ死ぬのかな!?」
「いやっ!!たかが雑誌の小さい占いページに、なんで自分の運命決め付けられなきゃいけないの!?ないから!!ガセだから!!」
「いや、これケッコー当たるって評判なんだよ!!」
「・・・ま、いいんじゃない?ほら、笑えるよ、うん。バラエティトークとかでさ、いいネタになると思うよ。」
「なんだよ〜その投げやったような言い方〜。悲しいよ・・・。僕、泣いちゃうよ・・・。」
わざとらしく『シクシク』とわざとらしく泣いた振りをする嶺ちゃんを見て、泣きまねと分かっていながらも少し焦りを感じてしまった。ソレはきっと嶺ちゃんとは仲のいい兄弟のようなものだから、どうにかフォローしてあげたいと言う私の善意なんだと思う。
「なっ投げやってなんか無いよ!?ほ、ほらだって見てみなよ!!てんびん座なんて総合運星二つ健康運星一つ恋愛運星一つって!!すっごく微妙だよ!!ネタにもならないよくだらないよつまんないよ〜。」
悲しんでいる嶺ちゃんを私はは雑誌をバンバン叩きながら必死にフォローしたが、勢い余って話した為か言い終わった後物凄いすごい勢いでゼーハーゼーハーと息を切らしていた。そんな中で私ははふと気づく。『てんびん座って私の知り合いで誰かいた気がする。』と。
「チッ・・・悪かったなぁ、ネタにもならない様なつまらない運勢で。」
ソファーから音も立てず静かにはっきりと聞こえた。その声の主は蘭丸だ。その瞬間、自然と笑いがこみ上げてきた。
「ブッッ・・・らっ蘭丸っっ・・・っい、いやね!!・・・ぷっ・・・悪気はなかっっ・・・・ふっ・・・・。」
「何笑ってんだよ!!てめぇ俺に喧嘩売ってんのか!!あ!?」
妙に威圧を出しながら睨む蘭丸。そんな蘭丸を見て必死に笑いを堪える。
「けっ喧嘩なんて売ってないし!!・・・ぷっ・・・あはははははははは!!!」
「おし!!表でろ、今すぐだ!!」
蘭丸は立ち上がると私に睨みを利かすが、私はそんな蘭丸を他所に、っと笑い続けていた。するとその中で一人、黙々と雑誌を読んでいる嶺ちゃんが不意に立ち上がった。
「ふっあはは・・・・・・ふふっ・・・・・どっうしたの・・・嶺ちゃん?」
「・・・・・かに座のラッキーアイテム、彼女・・・だって・・・。」
「かのじょ!?」
私は驚きの余り思わず叫ぶと『うるせー。』と蘭丸に頭を小突かれてしまった。
「ちょっと何すんだよ馬鹿。サイ――――」
「僕ちん彼女なんていないよおおおおおおおおお!!どうするんだよおおおおおおお!!ていうかアイドルは恋愛禁止なのに!!こんなアイテムにされちゃ困っちゃうんですけど!?」
私の言葉を遮る嶺ちゃんは自らの不運を叫びだす。それと同時に、私と蘭丸の頭に疑問が浮かんだ。
「いや、まずアイテムにしちゃう?いや、普通パーソンでしょ?なんでアイテムにしちゃったんだよ彼女を。」
てか嶺ちゃんも本気にしすぎよ?それはただの雑誌の隅っこにある、ガセ率の高い占いなのよ?
と言いたい所であったが、ソレは胸の中にしまっておく事にする。兎に角今の嶺ちゃんは正気ではない気がする。だから言っても意味がないだろうと自分で納得した。
「たく、どこなんだよそれ書いてる会社は。」
蘭丸は嶺ちゃんに問うと、嶺ちゃんは雑誌の側面を見て会社名を確認すると口を開いた。
「早乙女書店。」
「アウトだわ。」
その名を聞いた瞬間、少しの沈黙の後に誰もが思ったであろう一言を不意に私は呟いたのであった。
FIN.
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