うたプリ


□ガラケー最高
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「ねぇ、なまえちゃん。」

「どしたの嶺二。」

「メアド交換しない?」

「いいよ。」

珍しくぎこちない表情をした嶺二は私の方に寄って来るとメアドを教えてほしいなんて言うから、快く承諾し携帯を鞄から取り出した。

そういえば嶺二とは結構長いのに、連絡先とか交換してなかったな。でも交換とかしてないのによく遊んだりしてたな。飲み会とかゲーセンとかいろいろ。

なんてこと今更気づきながらも、赤外線送受信を終わらせた。

「ほい、登録完了。」

「ありがとう。」

それにしてもさすがは今時と言うか、芸能人と言うか・・・。スマホ民・・・。嶺二は今となっては絶滅危惧種のガラケーを捨て、今となっては多種のスマホ側につくとは・・・。何と無く解せん。クソ・・・。なんだよ。スマホは確かに便利だよ。凄く便利。でもなんつーかガラケーに冷たく無いか?なんかスマホにしかできない事が多すぎて腹が立つ。いや、妬みとかじゃないよ?羨望してる訳じゃないからね?つか絶滅しようとしてるこのガラケー族についてて光栄だよ。なに、スマホ?HAHAHA何そのおこちゃまみたいな道具。何でも出来ちゃうなんてつまんないよそんなの。分からない事は自らその答えを導きだす。その方が方が幾らか楽しいし素晴らしいじゃないか。これだからやめらんないよねガラケーってのは。

「どうしたのなまえちゃん?そんな僕のケータイ凝視しちゃって・・・」

「えっ・・・・あ、ううん何でもない。」

イカンイカン。スマホなんて凝視してたらまるで私がスマホに買い換えたいみたいな?そんな風に勘違いされてしまうのは困る。なんてったって私はガラケー民と言う物に誇りを感じているのだから。ガラケー最高!スマホなんてクソ食らえ!

それにしても、さっきから蘭丸は黙ってこっちを見ているのだが。一体何がしたいのだろうか?ずっとこっちを見られてもなんだか居辛くなる。とりあえずこの謎な視線から逃れる為に私は蘭丸に話しかけてみる事にした。

「ねぇ、蘭丸。」

「・・・・・・。」

「・・・蘭丸?」

「・・・・・・。」

応答なし・・・。どうしたんだこいつ。気づかないぞ。病気か?病気なのか?

仕方ないのでそばまで近寄って目の前で片手を振りながら『お〜い。』と呼びかけたのだが、やはり気づく様子はない。と言うかこれだけ至近距離で人が呼んでいるにも拘らず全く気づいていないと、なんだかホントに熱でもあるんじゃ無いかと心配になってきた。とりあえず額に手を当ててみる。が、熱くはない。
何だこいつ。熱以外の病気?なにじゃあ真っ直ぐしか見れない病気にでも罹ってる訳?【真っ直ぐ見る病】とでも言う訳?いや、ソレ言いたかったのは私だけどね、うん。何気に自分うまいわ〜とか思っちゃったよ今。いや、そうじゃなくて。そんな事はどうでも良いんだ。と言うか嶺二も同じ部屋にいるのに、何故かスマホを目の前に珍しく顔綻ばせちゃってるし。完全に自分の世界に浸っちゃってるし。

兎に角、この銅像と化している黒崎蘭丸22歳を今すぐにどうにか何かしらの皮から開放しなければ、こいつは完全に銅像となり悲惨な運命へと誘ってしまう。そんな事、なってしまってからでは遅い。あぁ銅像の神様。どうか蘭丸を銅像にはして上げないでください。きっと彼はまだ歌い続けたいはずだ。と言う一心で激しく揺する。もう途中どの辺の語りで揺すってたかなんて分からないが、とりあえず揺すっていたんだ私は。きっとあぁ神様ら辺で。

「いっ・・・・おい、なまえ―――!!」

「あっ・・・。」

「揺らしすぎなんだよ馬鹿!」

馬鹿とは何だ馬鹿とは。とりあえず聞かなかった事にして『あ、ごめん』と謝る。どれだけ揺するのに夢中だったんだろうか私は。自分が怖いよ。こんな風に思うことあるんだな。自分で自分が怖いなんて思うこと。

余談はさておき。銅像から逃れる事が出来たと思われる蘭丸は目の前に居る訳だが。まぁそりゃそうか。銅像になるなんて可笑しな事がある物か。かといってさっきの話を自分が本気にしていた訳じゃないさ勿論。あんな事本気にしてたらタダの頭沸いた奴だよ。それかよっぽどの純真で純粋な、すぐ人を信じちゃういい子なのか。まぁ私に限ってそんな事はありえないのだが。とりあえず蘭丸に一言聞きたい。

「あんたジッと私を見てて、呼んでも全く気づかなかったんだけど。なんで?」

「・・・いや、それは・・・。」

なんなんだこの歯切れの悪さは。私何かしたかなこいつに。何かしたと言えば、揺らしたくらいだよ。でもアレは助けてあげたんだよ。もしもあの時揺らしてなかったらお前は銅像の神様によって銅像にされてたんだからな!?助けてやった私に感謝しろよ!
っとまぁネタもけっこうひきづってしまった訳だけれども。そんな話はさて置き。歯切れの悪さに疑問を持たぬ筈がない。ここは質問攻めで行こうか。

「何?どうしたの?」

「なんつーか・・・その・・・。」

「はっきり言いなよ。」

「いや・・・だから・・・・その・・・。」

「テメェ、ロックな男なんだろ?あぁ?」

「テメェ俺に喧嘩売ってんのか?」

「すみませんごめんなさいすみません。とりあえず理由を述べてくださいごめんなさい。」

「・・・・・・。」

何故そこで顔を赤らめる。可愛いなオイ。と言うか可愛いけれど顔を赤らめる意味が分からないのですが蘭丸さん。自分では分かるかもしれませんが私には全く分からないので説明して頂きたい。

「その・・・。嶺二と・・・。」

「・・・嶺二・・・と・・・・・?」

「・・・・・・。」

え、ちょっとなにこの可愛い子。顔赤らめながら俯いて黙り込んじゃったよこのロック。と言うか今の勇気振り絞った黒埼蘭丸君の一言ですべて察したよ。恐らく、俺とも連絡先を交換してほしいと。きっとそう言いたいのですね彼は。

仕方がないので心優しいお姉さんな私は携帯を取り出し蘭丸に一言「そうそう、アドレス交換しない?」と言ってやった。すると蘭丸は顔を上げ一瞬だけ綻ばせたが、一気に何時もの無愛想な表情になったのを私は見逃さない。心のムービーフォルダに永久保存しておくことにしよう。

そんな蘭丸は、『おう。』と一言。ソレと同時に私は自分の携帯画面に視線を向けて赤外線モードに切り替えた。
蘭丸の連絡先を登録すると、私はふと蘭丸の携帯を見てガラケーだった事に気づく。仲間だ。此処に絶滅しかけている数少ない仲間がいる。今だけ鰻の気持ちがとても分かる。きっと鰻も今となっては数少ない仲間に出会ったらこんな気持ちなんだろうな。それにしても良かった。私はとても感心している。

「蘭丸、大好きだ!」

「は!?!?ちょっっ!!!」

思い切り蘭丸に抱きつくと蘭丸は勿論慌てふためいていたが、突き放さずに珍しく私を受け止めてくれていた。




FIN.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そういえば、何時の間に嶺二部屋から居なくなったんだろう。
やべぇやべぇ!何でこいつこんな抱きついてっ!


抱きついている中での二人の心境。
蘭丸可哀想だね。
――――――――――

ライズの新しいシリーズで書こうとしたら、何時の間にか短編になったし、蘭丸の話になっていた。
ちなみに嶺二の行方は、主人公から連絡先をゲットし嬉しさの余り我慢できなくなって部屋から飛び出てしまった。

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