うたプリ


□私の夏の思い出。
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この四人を誘った時点で私の選択ミスなのだろうか。いや、こんな風になるのは大方予想はついていたけども。でも一人で花火大会に行くなんて相当虚しすぎるじゃん?ぼっちで行くのってかなり勇気いるでしょ?絶対痛い視線を突きつけられ、混雑した道でひたすら押されながら一人歩き続ける。そんな自ら拷問じみた事したくない。ソレならば、仲が悪くても大人数で行った方が居心地は一人よりも悪くは無い筈だ。そう、筈だったのだ・・・。

「オイおめぇらオセェんだよ!早くしねぇと焼きそば売り切れるだろーが!」

「黙れ!貴様の都合になど合わせてられるかっ!こっちは数量限定の特大綿アメの列を探すのに忙しいのだ!」

「そんなのどうでもいいから、とりあえずこの人だかりからボクは抜け出したいんだけど。」

「皆ー仲良く集団行動しよーよぉー・・・。順番に回っていけばいーんじゃなーい?」

「・・・・・・はぁ。」

何なのこの自己中共の集まりは。いや約一名は、恐らく私の事考えてくれているのだと思うのだけれど。さすが大人だな。いやでも四人中三人は大人だからね?一人は完全に未成年だけど。

「皆仲良く集団行動だと!?ざけんな!此処は戦場だ!」

何のだ。何の戦場なんだ。食物戦争か?何処の世界の人間だお前は。花火大会に来てまで食い物なんですか!私は皆で花火見たりとかして楽しみながら、屋台の食いモン食ったりとかそう言うのを期待してたんですけど。いやまぁこの面子でそんなワイワイキャッキャ楽しくするとか、そんな期待カス位しか抱いてなかったけどね。

「てめぇらじゃ役にたたねぇ。」

まるで捨て台詞の如く蘭丸は一言言いはなつと、一睨みし去って行った。何故たかが屋台の食べ物に、あんなにも真剣なんだろうか。こんなのしょっちゅうだが、何度見ても馴れない事なんてあるんだなとしみじみ思う。

「で、カミュもランマルと同じように一人で行くわけ?」

「フッ寂しいのであればこの俺に付いてくるがいい。」

「気持ち悪いんだけど。」

藍ちゃんの言っている事がご尤もすぎる。相変わらず上から目線なのが気に食わないな。そんな寒い伯爵を蔑むように見ていたら隣から視線を感じ隣に顔を向けると、その視線を送っていたのは嶺二だった。『なまえちゃんどうする?』と小声で尋ねられたので『とりあえず私は蘭丸探しに行く。で、見つけたらそっちに合流するよ。』と言うと嶺二は苦笑しながら『分かった。』と言い藍ちゃんと一緒にカミュに付いて行った。嶺二は気が回る人で助かったと少し感謝すると、この人ごみの中に紛れ込んでいる蘭丸を探しに行く事にした。

探しに行くと言っても、居場所は大体予想がつく。と言うか焼きそばの屋台で並ぶ列を探していれば、何時か見つかるであろう。そんなこんなで焼きそば屋の屋台を見つけ、その前で並ぶ人々を一人一人見ていくと、すぐにに見つける事が出来た。小銭片手に屋台の前で並ぶ蘭丸に駆け寄り肩を小突いてやると、蘭丸はこちらに顔を向けると私を見た瞬間少し驚いたような顔をした。

「何その顔。」

「なんでお前が此処にいんだよ。」

「いーじゃん。」

そういって蘭丸の隣で一緒に並ぶ事にした。だが、何故か蘭丸は訝しげな視線を私に送ってくる。それに耐え兼ねた私は蘭丸のほうを見ると『何?私が此処にいる事がそんなに可笑しいの?』と尋ねた。

「別に・・・。」

恐らく気を使ってくれたのであろうその一言に『そう。』と言葉を返してやると、なんだか少し気まずい沈黙が流れる。なんだかこの気まずい空気の中この蘭丸と一緒に居るのは少し辛さを感じて、よく分からないが真意を打ち明ける事にした。真意と言っても、そんな重苦しい話ではないのだが。

「祭り。」

「あ?」

「折角皆誘って皆で来たのに、バラバラになるの嫌ジャン。」

「・・・あぁ。」

「だから蘭丸を説教しに、ね。」

「は?」

「食べ物に目が行き過ぎ。もうちょっと私たちの事も考えてよね。つか誘った私の事を考えろ。」

「なんだソレ。我が儘な奴。」

「あんたに言われたくない。」

一拍おいてから二人で少し笑った。

それからやっと順番が回ってくると、何故か焼きそばを二つ購入する蘭丸。一人で二個とかドンだけ食うんだよこいつ。とか思ってたら一つ私の方に差し出してきて『やる。』とか言って顔を背けた。意外と可愛いトコあんジャンこいつ。そんでもって意外といい奴なんだな、なんて。今更思ったりして。


++++++++++


特大綿アメの列に並ぶ一行を蘭丸と辺りを見回しながら探していると、嶺二の呼ぶ声が聞こえやっとそこで合流した。それにしても思ってた以上に長い列で驚いた。皆数量限定特大綿アメにドンだけ食いついてんだよ。でもよくその列を並ぶ人一人一人見ると、殆どが子供であった。何だろうこの気持ち、何だろうモヤモヤするな。それに堂々と並ぶ伯爵もどうかな。どういう神経しているんだろうか。

「ハッ愚民共が。俺の特大綿アメの行列に並ばせてやってる事を光栄に思うのだな。」

意味が分からん。何が言いたいんだこいつ。
カミュの意味の分からない発言を皆スルーした後暫く列に並び続けると、やっと屋台まで辿り着くことが出来た。カミュは財布からお札を取り出し特大綿アメを三つ頼んでいた。三つと言われた時のおじさんの顔、すごかったなぁ・・・。何て思いるうちに、おじさんの丹精込めて作られた特大綿アメ三つは出来上がっていた。おじさんはカミュに綿アメを渡すとカミュは満足そうに屋台を去り、私たちはそれに付いて行った。だが途中で急に立ち止まり、カミュは綿アメの三つのうちの一つを私に差し出してきた。思いっきり私の頭の中ははてなで埋め尽くされて首を傾げると、カミュは『貴様にこの俺から一つ呉れて遣ろう。』と偉そうに言われ『何故?』と問うと『貴様がこの祭りに俺を誘って居なかったら、俺はこの特大綿アメに出会うことが出来んかったのだ。だからその礼だ。』と言われ『あ、どうも。』と言い素直に受け取った。そんなカミュになんだか少し感心している自分が居る。こんな普段偉そうな事言ってても、たまに優しい時があるんだな。それにしても、こんなドデカイ綿アメ一人で食べきる事など到底不可能だ。カミュには悪いがこっそり嶺二と蘭丸と藍に分けてあげる事にした。そんな中カミュはご機嫌に綿アメに思いっきりMy練乳をぶっ掛けて食しており、私達だけではなく周りに居る人もドン引きしていた。まさかの綿アメに練乳ですかカミュさんっっ!
さすが異常な甘党。

「ミューちゃん・・・綿アメにも練乳かけるんだね・・・。」

「愚問だ。」

どうやらコレがカミュの中での常識らしい。

続いて私達が向かったのは、金魚すくいの屋台。私が行きたいからと言って来たのだが・・・何故この四人はこんなにもやる気に満ち溢れているのだろうか。と言うかこの四人が近づいている所だけ金魚がいない気がするのはホントにタダのまぐれ・・・だよね・・・?
四人がお金を出し、御椀とポイを受け取ると颯爽と構える四人。
何なのこいつら・・・。ただただ呆気にとられている私を他所に、何時の間にか四人は真剣に掬い始めていた。

「くっ・・・。」

最初に紙が破れたのはカミュである。まだ一匹も掬えていなかったようだ。それに続いて、嶺二、蘭丸、も敗れて掬えなくなっていったが藍ちゃん一人だけは残っていた。だがよく見てみると藍ちゃんが手にしているポイは全く使った形跡がない。

「藍ちゃん・・・?掬わないの・・・?」

「この紙の薄さだとしっかり計算してから掬わないと確実に失敗してしまう。だからボクは計算どおりに動いているんだ。」

「は・・・はぁ・・・。」

理解不能な藍ちゃんの発言に、私は曖昧な返事しか出来なかった。
動く気配が全く無いなぁと思った瞬間、突然『今だ!』と言う声と共に凄まじい速さで金魚を掬う藍ちゃん。何この子そんな達人みたいな技持ってたの!?と圧倒されている内に、何時の間にやら結構な量の金魚が掬えたらしく、ソレを見た屋台のおじさんは目玉が飛び出るくらい目を見開き喫驚していた。

「アイアイすっごーい!!」

「でもこんなに沢山掬ったところで、藍ちゃん家で育てられる?」
「なまえに全部あげる。」

新手の嫌がらせですか藍さん。とりあえず二匹に減らして貰い、おじさんも少し安心したような顔をしていた。よかったなおじさん。

「ありがとね藍ちゃん。」

「・・・別に。」

そっけない一言に、藍ちゃんには気づかれないように少し笑った。



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