うたプリ


□私の夏の思い出。
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「あ。」

「どうしたの?なまえちゃん?」

「唐揚げ屋の屋台があるよ。」

指差して買う?と嶺二に聞くと、嶺二は絶望したような顔で『なまえちゃん・・・。』と言うので『なんでしょう?』と返すと『唐揚げは・・・寿弁当の唐揚げが一番美味しいんだからね!』と思ってた通りのことを言われ大笑いしてしまった。

「分かってるよ!あははっ。」

「もう!なまえちゃんのいけず!」

「だって、嶺二の反応面白いからさー。」

そう言ってまた吹き出すと嶺二は私の肩をポカポカ叩いてきた。それを見ていた蘭丸に『ガキくせー。』と言われたので『蘭丸もじゃん。』と言うと『俺は孤高のロッカーだからお前らとは違うんだよ。』とドヤ顔で言われた。

「そう言うトコがガキなんじゃないのかなー。」

蘭丸には聞こえないよう小声で言ってみた。

「何か言ったか?」

「べーつーにー。」

「ランランはなまえちゃんの事が好きだから、僕となまえちゃんとで喋ってたのが気に入らなかったんだよね〜。」

蘭丸はソレを聞いた途端嶺ちゃんを睨みながら『ちげぇ!!』と反論するけれど、嶺二は『も〜ランランは素直じゃないんだから〜。』と言い完全に流されていた。

「二人とも五月蝿い。」

「全くだ。愚民共の戯言に付き合ってられんな。」

「まぁまぁ、いいじゃないの。折角の花火大会なんだから、楽しもうよ。」

二人を宥め、嶺二と蘭丸の言い合いが落ち着いた所で再び歩き出した。


いよいよ本題の花火が打ちあがる時間が近くなってきたと思ったら、よりにもよって蘭丸と藍ちゃんとカミュと逸れてしまったという事態。勘弁してくださいよホントに。まぁ嶺ちゃんが居てくれただけ良かったけれど。

「探すにもこの人ごみだしな・・・。そろそろ始まっちゃうし・・・とりあえず二人でよく見えそうなところ探さない?」

嶺二は苦笑しながら私に尋ねてきたので、私はその意見に賛成し頷いた。
それからタイミングがいい事に近くに花火がよく見えそうな場所があったので、二人でその場所まで行き肩を並べて座った。それから一応メールで居場所を知らせておこうかと言う話になり、蘭丸達にはメールで居場所を書いて送信した。携帯を鞄に仕舞い嶺二を見ると、何故か嶺二は私を見詰めていた。

「・・・どうしたの?」

何処となく微笑んでいる気がする。何故嶺二は私の方をジッと見詰めているのだろうか。私の顔に何か付いているのであろうか。
嶺二がこちらを見詰めているのか不思議で仕方がなく、考えを巡らせていると嶺ちゃんは私を見て笑っていた。

「なんで!?なんで笑うの!?」

「いやっ?フフッ。なまえちゃん不思議そうに僕を見てるからさ。」

「だって嶺二が私の事ずっと見てるから!なんでずっと見てんの!?」

「いや・・・?なまえちゃん楽しそうでよかったなって。」

「はい?」

思いも寄らぬ言葉に思わず間抜けな声を発してしまう。
いや、確かに楽しいよ最初の頃とは比べてね?最初は喧嘩してて(主に蘭丸とカミュ)どうなる事かと思ってたけどさ。

「何その顔っ!アハハッ!」

「わーらーうーな!!」

そう言って嶺二の肩を小突いてやった。

「もう!なまえちゃん乱暴なんだから〜!」

「うっさい!」

笑う嶺二を横目に少し間をおいてから『・・・嶺二の言ったとおり・・・楽しい・・・かも。』と言い嶺二を見ると笑いながら『かも?』と指摘された。

「楽しいですぅ〜!」

「そんなむきにならなくても〜。なまえちゃんったら恥ずかしがり屋さんなんだから!」

「恥ずかしがり屋さんって・・・それは蘭丸の事でしょーが。」

「あはっそうだね。ランランもだ。」

だから私を含めないでよ私を。別に恥ずかしがり屋じゃないから・・・多分。

「最初の頃は、どうなる事かと思ってたけどね。ま、結局楽しかったからいいんだけどさ。それに、皆の優しさにも触れたし?」

「優しさ?皆の?」

「うん。嶺二も蘭丸も藍ちゃんもカミュも、皆さり気なく優しさ持ってんだなって。」

「そっか・・・。でも、僕まだなまえちゃんに何もしてあげてない気がするけど?」

「ううん。嶺二が気づいてないだけだよ。普段からいろいろ助かってるし。主に例の二人の問題とかね。」

冗談めかしに笑うと、嶺二も一緒に笑った。

「あ、じゃあさ、お礼頂戴よ。」

「お礼?」

お礼と言うと、何かを買ってあげるとか?ご飯おごるとか?いやいや、嶺二に限ってそんなことは無いだろう。そんな事言う奴は、今日も一緒に居た貧乏ロック位だ。
となると、嶺二にお礼するとなると・・・何がいいのだろうか・・・?

「ん〜、ここ。」

「・・・ここ?」

そう言って嶺二は人差し指で自分の頬をトントンと示した。

「分からない?」

「えぇ、全く。」

「もう、ほっぺにチュだよ!」

「はああああぁぁぁぁぁぁ!?」

何故だ!?恋仲と言うわけでもないのに、何故私が嶺二の頬にキスしなきゃならないんだ!?タダだけど!確かに思ったとおり貧乏ロックとは違う事言ってるけどさ!よりにもよって何故そんなラブラブな恋人同士が、野外で、ほっぺにチュウ、らしき事を!?

「ほらほら早く♪」

何故そんな急かされるの。やるなんて言ってないよね?しかも音符つきで言ってくるのやめて!?
そんな私の気持ちも知らず嶺二はずかずかと私に近寄り、ほっぺにチュをせがんできた。

まぁ、お礼だしね。頬にキス位なら、うん。大丈夫だよね。何も恥ずかしがることなんてないよ。そうだよ私。
心の中で強引に自分に納得させると、嶺二の頬に自分の唇を近づけキスをしようとした・・・が・・・。


「何・・・やってんだ、おめーら。」

なんとも言えないタイミングの悪さ。逸れた三人は私たちの許まで辿り着いたのだ。
最悪・・・。泣きたい。
だがショックの余り私の体は無様に涙すら出すことが出来なかった。

「もう〜せっかくなまえちゃんからのほっぺにチュが頂ける所だったのに〜!」

「なーにがほっぺにチュだ!ざけんな!」

「ランランそんなに怒る事じゃないでしょ〜。って言うかアイアイ・・・さりげなく僕からなまえちゃんを引き剥がすのやめてくれない・・・?お兄さん悲しくなる・・・。」

「安全を思ってやってあげたまでだよ。ね、なまえ。」

もはや藍ちゃんの問いかけにすら答えたくない。
その状況を見られたってのが、私の中ではかなりの大傷。なんで来てしまうかもしれないって事を考えられなかったのだろうか、数分前の自分は。今すぐDえもんのタイムマシンを使って過去に戻りたい。

「全く。目に余るものを見せるでない。」

「すいません。ホント。」

普段だったら此処では言い返す事が出来る筈の伯爵の一言に、謝罪の言葉しか出なかった。そして謝った瞬間、まるでそれが合図かの様に花火が打ち上げられた。




―――○月×日 私の夏の思い出。皆で花火大会に行きました。私は皆の優しさに触れる事が出来てとても感心した・・・のはいいものの、最後には心に大きな傷を残して終わった後味の悪い夏の思い出です。



FIN.
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