短編
□変わっても変わらない
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買い物帰り、ふと足が止まった。
目の前に広がるのは普通の学校。
なんとなく、その中へと足を運んだ。
今日は休日で普段練習してる部活もなく、やけに静かだ。
いつもみているはずの廊下も、その静寂のせいかいつもと違ってみえる。
あたりを見渡しながら歩いていると、自然と再び足が止まった。
『2-A』
そんな表札がある教室をじっと見つめる。
騒がしい仲間達と過ごす日々で、コレをみることはあまりない。
だけど今日はなんだかこの表札が大きく見えた。
買い物袋を持たない方の手をドアにあて、横にずらした。
「あ、ツナくん!」
人がいるとは思わずハッと意識をしっかりさせると、そこには大切で大好きな人が席に座っていた。
「京子ちゃん!?」
予想外過ぎて驚きの声をあげると、彼女は優しく微笑んだ。
「あれ?お買い物したの?」
「うん。母さんに頼まれて。夕食とランボ達のお菓子をね」
「あ、ほんとだー。ランボくんの大好きなぶどう味の飴もあるー」
買い物袋を机に置き、彼女のそばにある机に軽くよしかかった。
「あれ?そういえば、京子ちゃんはなんでここに?」
「そういうツナくんこそ」
「オレはなんとなく…」
「私も…」
なんだか気持ちが一緒になったみたいで、お互いクスリと笑う。
そしてツナは辺りを見渡した。
「もう、この教室とはお別れなんだね」
「明日からは3年生だもんね」
「受験…かぁ…どうしよう」
困り果てた顔でそう言うと、対するように彼女は満面の笑みを浮かべた。
「あははっ。ツナくんは大丈夫だよ!もし落ちても『ボス』だから就職には困らないもん」
「え!?京子ちゃんまで!?」
まさか彼女までマフィアのことを言われるとは思わず、なんだか複雑な気分だ。
京子はそんなツナをじっと見つめた。
「ツナくん、変わった」
「え?」
いきなりの言葉に唖然とする。
「でも…変わってない」
強い瞳をしてそう言った彼女。
強い瞳だけど、そこには優しさを感じた。
「…京子ちゃんも」
そう言って互いに見つめてるとなんだかおかしくなってきて、ふっと笑った。
いくつもの戦いを乗り越えて強くたくましくなった。
時には苦情の決断をし、仲間達の命を背負い闘った。
そこには計り知れない重みがあり、"優しい"だけではいられなかった。
彼女もまた、ツナ達の戦いを知り、辛さも痛みも共に背負ってきた。
何も知らずにいた…ただ守られてた…
そんなノーテンキな自分に怒り悲しみ恥ずかしみ、"無邪気"ではいられなかった。
変わってしまった2人。
変わらざるを得なかった2人。
だけど、変わらないものがあった。
それがなんなのかはまだハッキリとはわからない。
それでも、確かにここにそれがあるということはわかるんだ。
「これからもよろしくね、ツナくん」
きっと変わっても変わらずにいれたのは、彼女がそばにいてくれたから。
優しいその笑顔をみたら胸があったかくなって、そんな気がしたんだ。
だから───
「こちらこそよろしくね、京子ちゃん」