捧げ物【編集用】

□10000打企画
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「ねぇ!この服可愛くない!?」
「コッチもまぁまぁやで!!」
「この色の方がよくない?」


夏にピッタリな爽やかファッションの少女が3人。
可愛らしい容姿で通りすがりの人たちを魅了する。
何人も彼女たちに声をかけようとするが、全員悔しそうな表情をこぼしその場を立ち去る。


「………もうそろそろ『戻りたい』んだが」


聞こえたのは惚れてしまいそうな少年の声。
しかし、それはどこか冷静のような戸惑っているようななんともいえないモノが含まれている。

「ダーメ!!」
「どうしてだ」

少年の願いは虚しく、あっさり拒否する少女たち。
少しでも早く『戻りたい』のかなんとか糸口を見つけようと問いかける。
少年の問いにきょとんとする少女たち。
しかし、その表情はニヤリと変わる。


「おもしろそうだから!」
「……………」


いや、おもしろそうですまないから!
頭から炎出してる人が歩いてたらヤバいだろっ!!

いつもなら叫んでただろう。
しかし、今の状態だとただ苦い顔をするのみである。

人に見つからないように山の中で修行中でハイパー化中だったツナ。
なのに休暇ということで空をダイビングしてた薫たちに見つかり、いきなり連れ出されて現在。
ハイパー化してる状態から通常に『戻ろう』としたが、彼女たちに阻止された。

さて、どうしたものか。

周りからの………

いや、背後からの視線が気になる。



「クソッ!!アイツら十代目を振り回しやがってっ……!!」
「認めんっ!たとえ綱吉クンでも認めんぞぉぉ!!!」
「まぁまぁ落ち着けって、2人とも」
「いい加減にして下さいよ。子供じゃないんですから」
「とか言ってるわりには、皆本クンも動揺してるように見えるケド?」



アレでばれてないと思ってるのだろうか。

「ゴメーン!用事思い出しちゃった」
「ちょいと待っててな」
「すぐ終わるから」

***少々お待ちください***


「ゴメンね、お待たせ〜」
「………あぁ」

……3人の手に見える赤い物体は無視しよう。


「それにしてもなんか暑いわね」
「朝は涼しかったのになぁ」

3人の“用事”を終えて街で買い物やらして結構歩いた頃、ポロリと紫穂の口から愚痴が漏れた。
確かに今朝の涼しさに比べると陽が痛いほどだ。

「だいぶ歩いたし、あそこで休むか」

そう言って指差す超ツナ。
そこには休憩用の椅子が日傘と共にあった。
3人は賛成するなり則椅子に座り、くつろぎ始めた。
なんとなくその姿がエサを貰ったイヌみたいで可愛くみえた。


「オレはトイレに行ってくるから」
「あ!戻らないでねっ」
「……わかった」

念のための釘を刺され席を後にする。

まさかハイパー化で街を出歩く日が来るとは思わなかった。
超能力が世間的にも認知されてるからだろうか。
意外にもハイパー化の状態でもそこまで大騒ぎにはならない。
ただ、目線は色々痛いが警察沙汰とかにならないのはありがたい。

それに、彼女たちの女の子らしいところを珍しく近くでこんなにも長く見た気がする。
彼女たちと一緒に行動する時はほとんど任務の時。
だから、彼女たちのイメージはカッコいいの方が強かった。
貴重な姿を見れたことに、なんだかもう一歩彼女たちに近づけた気がした。


「飲み物、買っていこうか」

もっといろんな彼女たちを知りたい。

自動販売機にチャリンとコインを入れた。



「……なんだ?」

ガヤガヤ聞こえる男たちと女たちの声。
両腕で4つのカンを抱え、声のもとへと歩きよる。


「悪いけど、私たちにはちゃんとお相手がいるの」
「かまへんでくれる?」
「今いないじゃんっ」
「オレいいお店知ってるんだよ」


見えたのは、チャラい男3人にナンパをくらう薫たち。

……まぁ、可愛いもんな。

なんとなく男たちの心情を考えてながら、冷静に眺めてる。
変に悪い方向に流れないかが心配だが。

そして、そんな心配は現実になる。


「ちょっとでイイからさぁ」

男はそう言って薫の腕をつかんだ。
すると

──プチンッ

何かが切れる音がした。

自然と手にチカラが入る。

「あんたたち、いい加減にしないとぶちのめ…」

男に向かって握った拳を振り上げようとした時だった。


カン!!!


「いって!!!」

何かが男の腕にあたった。
あたった衝撃で男の手によってつかまれてた薫の腕が解放された。

「か、缶ジュース?」

近くで落ちてた缶ジュース。
恐らくコレがあたったのだろう。
しかし、なぜコレが…?
首をかしげる薫。

すると、先ほど少し席をはずしてた彼がゆっくりと平然と歩いてきてた。



「悪いが、彼女たちのお相手はオレだ。下手なナンパは他でやってくれ」



いや、訂正。
平然ではなかった。
少しばかりかどこか怪訝そうな顔をしている。


「なんだ兄ちゃん?文句あんのかよ」

対して怖くないからだろう。
強気の男たち。
しかし、彼らはすぐさま彼の恐ろしさを知ることとなる。


「ちょっとくらい貸してくれ…がっ!!」




「他でやれと言ったはずだが」




目が丸くなった。

なぜかって、さっきまで向かいで平然としてた少年が、いつのまにか男の溝うちに拳をたたきこんでいたのだ。

やられた男はそのまま気を失っている。


ヤバイ!!


そう本能が反応した。
しかし、ココで引き下がれないという妙なプライドで男たちは罵声を放とうとする。
しかし、その瞬間男たちの体は宙を舞う。


「グハッ!」
「ガッ!!」


一般人にはわからないスピードで蹴り倒す超ツナ。
まさしく瞬殺。

薫たちから見えるのは彼の後ろ姿。
普段は優しいというイメージの強いツナ。
こんなにもバシバシ相手(一般人)に暴力を振るうのは見たことがなかった。

「……ツナ」

思わず彼の名を口ずさむ。
声が届いたのだろうか。
彼は振り向きこちらに歩いてきた。

「大丈夫だったか?」
「…うん」

彼女たちの安全を確認しホッとする超ツナ。
そんな姿をみると、やっぱりツナなんだと感じる。

「喉乾いてないかと缶ジュースを買ってきたんだが、どれがいい?」

そう言って左腕で抱えてた3つの缶ジュースを差し出す。
すると、薫はツナの横を通りすぎて倒れてる男たちの方へと歩き出す。

「薫…?」

どこに行くのかと彼女の背中を見るツナ。
すると、彼女は足をとめ、しゃがみだした。
いや、何かを拾ったみたいだ。

「あたしはコレで!」

そう言って振り向いた彼女の手には、男に向かって投げた缶ジュース。

「でも、それ汚いし…」

思わず投げた缶ジュース。
人に向かって投げて思いっきり地面に落ちたソレは自分でいいやと思っていた。
だって、そんな汚いものをあげられない。

「あたし、りんごジュース好きなんだ」

そう言って満足そうにフタを開ける薫。

「…そうか」

彼女がソレでいいのなら構わない。



その後、葵と紫穂もジュースを選び、また歩き出した。
自分の隣には紫穂がいて、薫と葵は後ろで何か話してるみたいだ。



「なぁ薫。アンタ、そんなにりんごジュース好きやったっけ?」

わざと超ツナと距離をとり、薫に問いかける。

まぁ見た目と味は反しないとしても、結構なボロ缶だ。
そんなのを選ぶほどのこだわりがあっただうか?

すると、薫は缶ジュースを両手で大事そうに握り目を瞑った。


「コレは特別なんだ」


そういって微笑む彼女。
葵の頭からハテナが消えず首を傾げた。




「だって、守ってくれた“証”が詰まってるから」



───“傷跡”という名の、ね
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