捧げ物【編集用】

□10000打企画
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何もない休日。
眩しい日差しに目が覚めると、葵と紫穂はもういない。
昨日の任務の疲れのせいか、時計の針は既に11時をさしていた。

「あたしがラストかぁ」

そんなことを呟きながら居間にとぼとぼ向かう。
そして、たどり着くとピタリと足が止まった。



「だいぶ色が変わってきたから弱火にしてフタで煮込んで終わり」
「おぉ〜!サンキューっす、皆本さん」
「えー……洗剤は表示された分量をメモリどおりにカップで測って……」
「説明書よみながら測るな!!」



「……なにしてんの?」

キョトンとした。

そりゃそうだろう。
隣の住民が起きたらきていて、皆本に料理やら洗濯やらを教えてもらっているのだから。


「いやぁ〜。皆本さんに部屋の惨状をみられて『ちゃんと清潔に正しい生活をしなさいっ!!』って…」
「あまりに酷いから、ちゃんと自立出来るように教えると言ったんだ」
「……ケッ」


悪そうにわけを話す武と皆本。
隼人はまぁ…あまり乗り気じゃないみたいだが。

……にしては何か足りない。

あたりをキョロキョロ見回すとソファーから声がきこえてきた。


「ツナくんならいないわよ」
「散歩にって外に行ったで」


声をかけたのはソファーでくつろいでた紫穂と葵。
2人とも既に着替えていて、完全に休日モードだ。


「散歩かぁ…」


めったに関わりのない言葉。
なんとなく惹かれてしまう。


「あたしもいってこよっかな」


そんな呟きを残し、着替える為に部屋をあとにするのだった。







「平和だなぁ」


平凡な光景に身をのせ自由気ままに歩く。
普段なんだかんだに人に囲まれてるからだろうか、久々のひとりを満喫状態である。


「たまにはこういうのもいいよね」

もちろん、みんなでワイワイ騒ぐのもいいけどね。


そんなことを考えていると、1人の青年が目に入った。



学ラン?



人々の色鮮やかな光景にポツリと浮かぶ黒。
そして、それに反するような綺麗な銀髪。
どことなく目に入る。


…あれ?今日って休日だよね?


違和感を感じながらも歩くツナ。
しだいに距離は縮まる。

いつまでもジッとみては変に思われるだろうと、別方向に顔を向けた。


その時だった。


ドンッ!


二人の肩がぶつかり合い、互いに体が跳ね返った。


「……いっ…て」

背中をさすり体を起こすと、学ランの青年もまた同じように体を起こしていた。


「す、すみませんっ!大丈夫ですか?」

余所見をしていたのは自分だ。
悪気を感じ即座に謝罪と手を差し伸べた。

「いや、僕も余所見をしてたからおあいこさ」

青年はそういって手を取り立ち上がった。



「それより、それなんとかしないと」
「え?」

指をさされた先は右ひじ。
少し擦りむけ赤いのが染み出ていた。


「僕の家に案内しよう。すぐに行けるから遠慮はいらないよ」


この時、直感した。

この青年は“わざと”ぶつかったのだと。
そして、それは悪意ではないということを。


「じゃあ、お、お願いします」


ふっと笑みを浮かべて青年は答えた。

「僕は兵部京介。よろしく」








……………って、確かについてったけど



「ココどこですか!?」



ここに着いたのは、あれから目隠しをされて数分。
治療してくれた後に船内を少しまわったのを含めると数十分。
確かに移動時間だけを聞けば、近くにあると思う。
けど



「なんで海の上ぇぇぇぇぇ!?」


頭をかかえ天に叫ぶツナ。
しかし、それはこだまするだけであった。



……はぁ



なんかひとりでさけんでる自分がみっともなく思った。
すると、どこからか声が聞こえた。


「なにひとりでさけんでんだ」
「え!?」


思わずビクリとした。
黒髪の少年が冷静にこっちを見てるのに今さら気づく。
そして、さっきまでの行動を見られてたかと顔を赤くする。


ひえぇぇぇ!絶対かわいそうな人って思われたー!!!


焦る気持ちに比例するように手振り身振りがあたふた現れる。
そんな意味不明な行動に少年は思わずつっこんだ。

「いや、マジでなにしてんだよ」
「え!?え、えっとその……風にあたって、た…?」
「なんで疑問系?」

的確につっこまれ、よりあたふたが増す。
すると、少年が必死に抑えながら笑っていた。


「ちょ、なんで!?」

「い、いやっ…ちょ…わりぃ。気にしないでくれ」


わけがわからないツナ。
気にしないでと言われると……


余計気になるんですけどぉぉぉぉ!!!!


…と大抵の人はなるもので、ツナも例外ではなかった。
そんな混乱状態をよそに最後の一撃をくらったかのように少年はブッと吹き出した。


「わ、わかりやす過ぎっ」
「えっ!?そ、そんなに!?」
「お前面白いヤツだな」


やっとこさ少年の笑いの原因がわかるツナ。
褒められてるのかなんなのか…
苦笑いを浮かべると、少年は息を整えていた。



「ここはまるで一つの家族みたいだね」
「まぁな」


ツナの言葉に端的に返す。
だが、その目はどこか優しさを持っていた。


「…同じだ」
「?」
「いいや。ただここにいる人達もみんな、きみと同じ目をしてるなってね」
「…意味わかんねぇよ」
「あはは…」


少年はどこか呆れたような顔をした。



「きみたちを見てると、おれの仲間を思い出すんだ」


風が吹き、海が鳴る。
それを受け止めるかのように目を閉じ、ポロリポロリと想いが落ちる。



「むちゃくちゃでいつも振り回されて…誰かの為に無茶して…その度におれはハラハラして…
……でも、あったかくて…優しくて…いつだって一緒に前に進んでくれるんだ」



落ちてく想いをひとつずつ繋げようとする。
ところどころはにかんで…幸せそうに。

そしてそれはあることをものがたっていた。



「大切な存在なんだな」

「うん」




思わずでた言葉にツナは答えた。
優しく。そしてはっきりと。
あまりの素直さに何故だか少年は海に体をそらした。





「……そういやお前、時間大丈夫なのか?」
「……………あ」










「ただいまー」

珍しく散歩をした薫はマンションのドアを開いた。


結局ツナとは会わなかったなぁ…


ツナを追いつくかと思い出かけた薫。
だが、気がつけばもう2時間以上はふらついてた。
さすがに疲れたし、ツナも帰っただろうと帰った。
しかし、居間にツナの姿はない。


「あれ?ツナはもう部屋?」
「いや…薫と一緒じゃないのか?」


互いにキョトンと問いかける。
そして、一瞬静寂が場を制した。


「え!?まだ帰ってないの!?」
「僕らはてっきりきみと一緒に帰ってくると思ってたんだけどっ!」
「いや、あたしもそのつもりだっけど!!」


ツナが出たのは薫が出るまえ。
薫でさえ長い散歩だというのに、さすがに長すぎる。


「まぁ、ツナのことだから自分から厄介ごとにはつっこまないとは思うけど…」
「…ツナくんは巻き込まれる側だからね」


山本の言葉を繋ぐ紫穂。
再び静寂が場を制す。


「ハッ…!!十代目の身になにかっ!!??」
「待て獄寺!洗剤垂れ流しで外に出るな!!」
「いや、出てなくてもダメだろソレ!!!」


我に帰った?獄寺に山本はツッコミを入れる。
それにさらにつっこむ皆本。
それを引き金となったのか、いつもの騒動が止まらない。
しかし、とある声でそれは再び静まる。


「あの、さ……なにしてるの?」 



苦い表情で言葉をかける。
その声の主はこの騒動のキッカケとなった人物だった。


「ツナ!!!」
「十代目!!!」



現れたのは心配してたツナ。
その姿に山本と獄寺は犬のようにかけていく。


「十代目っ!お怪我はございませんか!?」
「え?う、うん。大丈夫だけど…」
「ツナが遅いからみんな心配してたんだぜ」


獄寺の心配ぶりに状況がよくのみこめてないツナに、山本がいつもの笑顔で話した。
ナルホドといったような表情を浮かべ、とっさに答えた。


「ちょっと散歩してたら人とぶつかっちゃって、怪我なおして貰ってたから…かな?」


そう言って右ひじを指差す。
そこには丁寧に治療が施されていた。


「十代目がお怪我を…!?この右腕、今すぐぶつかったヤツを見つけてシメてきますっ!!」
「いやいやいや大丈夫だから!!てか、シメちゃダメだから!!それにぶつかったと言ってもおれが」
「おっ!そりゃおれも行かなきゃな!!右腕は譲る気ないしっ」
「んだと野球バカ!!」
「山本、のらないで!!」



突っ走る獄寺に、便乗する山本。
冷や汗をかきつつツナはつっこむ。
そんないつものやり取りにいつのまにか薫達も参加していた。
薫はツナを煽り、獄寺がそれに反応する。
それにまた紫穂や葵も乗っかるから、ツッコミ役がツナと皆本しかいないという大変な騒ぎになった。


でもやっぱり、こんな馬鹿な日常がオレの幸せなんだ。



ツナは微笑んだ。
その日常がどうかこれからも永遠でありますように………












カタストロフィ号



「で、どうだった?カガリ」
「別に…そんなに話してたワケじゃないですから」


問いかけにぶっきらぼうに答える少年、カガリ。
問いかけた学ランの青年はそんな彼に軽く微笑んだ。


「深く考えなくていいんだよ。キミの直感を聞きたいんだ」


一瞬顔をハッとあげた。
でも、すぐさま目線は下にいった。


「ホントによくわからないんですよ。最初は単純バカなのかと思ったけど、なんかちがくて…」



『大切な存在なんだな』

『うん』


まっすぐ答えたツナ。
何故か自分は顔を逸らした。
なんで?
どうして??




「ただ、眩しかったのかもしれません。…あの人の仲間を想う心が」

呟くように言葉を落とした。


別に羨ましいわけじゃない。
これでも仲間想いのやつらに囲まれてることは自覚しているつもりだ。
なのになぜだろう。
あの人が眩しいのは…
あの瞳が眩しいのは…



「………」



沈黙のなか思考を巡らす。



ハァ……


息がこぼれた。



「彼を“メサイア”と認めるかどうかは、まぁオレ的には保留…ですね」

「そうか」


カガリの結論に青年は軽く力が抜けた。
そしてポンと彼の肩を叩き、その場を立ち去ろうとした。


しかし、ふとその足が止まる。



「そう遠くないうちに君たちを彼の…そして彼女たちの近くにいさせるつもりだから…


その時にまた聞くから、よろしく頼むよ」



どこか企みのある口調。
一瞬ニヤリとしたように見えた。



「…了解」

静かに答えた。
そして、彼もまたニヤリとした。



次はこのモヤモヤ、はっきりさせてやろうじゃねぇの。


再会はすぐかもしれないぜ、沢田綱吉。
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