旅人の夢
□彼岸花の旅人
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プロローグ
昔々、奈良に平城京が出来たばかりのころ…
時の権力者たちはあることに悩まされていました。
それは人間が誰しもがもつ運命”老い”でした。
人の一生は儚く異形の者達から見ればほんの一時
権力者たちは考えました。”老いることなく、また死ぬこともない方法はないのだろうか”と
そしてある時見つけてしまったのです。
不老不死の妙薬
人魚を…
大陸から伝わった話によれば人魚の肉を食べたものは不老不死となり血を飲んだものは不老になるというものでした。
権力者たちは血眼で人魚を探しました。
その話から数年後とうとう権力者たちは人魚を見つけました。
捕らわれた人魚は自分がどうなるか分かっているのか悲しげにこう言いました。
「私を食べても不老不死にはなれない」
人魚の話によれば人魚の血肉に宿る力は人間には強すぎて逆に毒になるというものでした。
けれども権力者たちはその話を信じず笑い飛ばし、人魚の首を刎ね血と肉にしてしまいました。
人魚の肉と血を手に入れた権力者たちは大喜びで家に帰りそれを家族にもふるまいました。
人魚の話をせず不老不死なれるとだけ言って。
人魚の肉を食べてみると味はとても美味で今までのどんな食べ物にも勝る味でした。
権力者たちは笑いました。
人魚の話は自分が助かりたいがための嘘だったと…
そんな時でした。
権力者の一人が急に苦しみはじめ為す術もなく死んでしまいました。
それから連鎖のように肉を食べた者達が苦しみ始めました。
ある者は最初に苦しみ始めた男と同じように苦しみながら死んだり、またある者は苦しみながら姿が変わり自我を失って化け物になってしまいました。
人魚が言ったことは本当だったのです。
肉または血を飲んだものは全て死ぬか化け物になってしまいました。
ある一人を除いて…
この事件の後に即位した天皇はこの事を重く見て人魚を食することを禁じました。
それからというもの人魚は恐ろしいものだと人々は知り人魚を探すものはいなくなりました。
そして、またその人魚たちも姿を消しその存在は御伽話にしか存在しないものとなりました。