一章

□0.ある少年の昔話。
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僕の両親は6歳の頃に他界した

その時は事実が受け入れられなくて泣きじゃくっていた

そんな僕は朝早い時間の縁側が好きだった

父さんと一緒に陽向ぼっこしたり

母さんの膝枕で昼寝したりした思い出の場所だったからね

ある日いつもの様に縁側に行って座っていたら、庭に彼女が迷い込んだんだ

彼女は同い年で良く笑う子だった

僕は親が他界してから笑わなかったから、

‘よく笑う変な奴’って思ったんだ

2人で話していたら彼女の親が来て、その日は彼女と別れた

後日、僕の親がいない事を知った彼女の親は酷く辛そうな顔をして、‘私達を親だと思って’と言った

僕は何故か涙が止まらなかった

それから僕は、父さん、母さんと呼んだ

本当の両親の様だった

彼女達は僕の家の隣に引っ越してきたそうだ

僕はいつの間にか彼女と一緒にいた

彼女は並盛小学校に転入して、同じクラスで隣の席になった

僕達は‘何かない限り、彼女か僕の家で宿題をしてから外で遊ぶ’

と、約束をした

それから僕は学校から彼女と一緒に家に帰り、

家の前まで来たら‘またね’と言って一旦家に帰り

宿題を用意して、彼女の家に行ったり、家で彼女を待ってたりして、また会って遊ぶのが日課になった

いつからか、僕は彼女の笑顔を見ると胸が痛くなったり、いつも彼女の事を考える様になった

彼女の家で宿題をしていた時、どうしてもこの気持ちは何なのか気になった

丁度父さんが側にいたから、彼女を思う気持ちは病気なのか、悪いことなのか、聞いてみた

そしたら父さんは少し悲しそうな、驚いた顔をしてから、

にっこり笑って、‘好き’という気持ちだと教えてくれた

初めて知った‘好き’という気持ちに、僕はテレビで見たように

「娘さんを僕に下さい」

と頭を下げた

父さんは一瞬驚いてから、笑った

母さんも笑っていた

何故笑われたかは分からなかったから、恥ずかしかった

頭を下げている所だけ見た彼女はオロオロしていた

そんな彼女に‘好きだ’と伝えると、‘私も好きですよ’と笑顔で言われた

それから父さんは、‘じゃあ、大きくなって想いが通じ合っていて、恭弥が強い子だったらな’と言い、

母さんは‘じゃあ、……は良いお嫁さんになっていなきゃだめね’

と、笑顔で言った

僕達は顔を合わせて、少し照れながら約束………

いや、婚約をした

その時はすごく

すごく幸せだった…

次の日、

学校から彼女と2人で帰っていた

いつもの様に

それから、いつもの様に‘またね’と言って、別れた

僕はいつもの様に宿題と筆記用具を用意して待っていた

だけど

30分たっても、

彼女は来なかった

今日は僕の番なのに間違えて家で待ってるのかな?

と、考えて

彼女の家に向かった

外に出ると、黒い車が数10m先を走っていった

僕は車は気にしないで彼女の家のインターホンを押した

だけど

何回押しても誰も出てこなかった

いつも通りの日々が壊れ始めた

僕はいきなり不安になってきて、震えた

何があったんだろう?

どうして彼女はこないんだろう?

僕は後で怒られるのを覚悟して、開いていた庭の窓から中に入った

彼女の部屋のドアを開けた瞬間

カラフルな部屋に飛び散った赤

横たわる父さんと母さん

彼女のカーペットは血が染みて赤黒い

駆けつけて泣き叫んでも、返事はこない

冷たい体

どうして?

何故?

としか思えなかった

それに、彼女の姿が見当たらない

それから救急車を呼んで、家の中を探し回った

だけど

彼女の姿は何処にもなかった

僕は一瞬で

3人の大切な人とお別れをした

救急車のサイレンの音が近づいてきて

沢山の知らない人が入って来た

警察も来て、あの時は彼女の家を荒らされた様な感覚だった

止めろ

ここは大切な場所だ

涙で前が見えなくて、

鼻水で顔はぐしゃぐしゃで

服は血で汚れていた

それでも僕は、

止めろと足にしがみついた

父さんと母さんを運んで行くやつらにも

一生懸命止めた

だけど大人達は

‘子供は黙っていなさい’

と言った

手遅れってどういう意味だよ

ご臨終ってなんだよ

そんなの分かりたくないよ

何度も何度も言ったけど、だれも答えてくれなかった

それから、父さんと母さんと彼女の姿は見ていない

気づくと1ヶ月がたっていた

何もしないで過ぎていく日々だった

周りの人達は、何事もなかった様な顔をしていた

先生に彼女の事を聞いたら、‘誰の話をしてるのかな?’と言った

彼女の席はあるのに、彼女の何もかもが消えていた

クラスメイトも、家政婦も彼女の事を知らなかった

警官だって、‘そんな事件無かった’と言っていた

まるで今まで長い夢を見ていたようだった

それから僕は、婚約の条件、

‘強い子になる’を実行した

きっと強い子になった頃には彼女が帰ってくるだろう、と思った

その頃の僕は単純で、絶対帰ってくると思っていた

たとえ彼女の事が全部幻だったとしても…

まずは体力を付けた

強い子はどんな子か情報を集めるには体力が必要だからね

次に勉強をした

強い子は頭が良くなきゃいけない

誰かがそういったから、僕は勉強を頑張った

小学3年生の頃には、高校生がやるテストで100点をとった

だけど彼女は現れなかった

小学4年生になってから泣かない子は強い子だと知った

みんなが感動したドラマを見ても、泣く程面白いアニメを見ても、けして僕は泣かなかった

欠伸だって咬み殺した

今年も彼女は現れなかった

小学5年生になったら、強い子は力があると思った

僕はトンファーを買って、何回も負けたけど泣かないで頑張った

ついに僕は並盛1強く、恐れられる存在になった

それでも、彼女は現れなかった

小学6年生の時

僕は、強い子は権力があると発見した

そしていつの間にか、僕は並盛最大権力を手に入れてしまった

だけど、彼女は現れなかった

中学1年生になって、掟を守る人は強い子だと聞いた気がした

だから、入学当日から風紀委員会に入って1番偉い風紀委員長になった

制服は、みんながブレザーを来ている中で学ランを来たら目立つから、

早く彼女に見つけてもらいたくて着た

また、彼女は現れなかった

僕は、ずっと彼女の事を想っていた

いつからか、血液型も年齢も忘れていた

僕にとってはどうでもいい事だったから

弱い事は悪い事だと思ってから、弱い‘群れ’を退治する事にした

必然的に僕は、強い人にしか興味がなくなった

だから僕は、弱い草食動物や群れが嫌いだ

強い赤ん坊には興味がある

権力と知力があるからいつでも好きな学年さ

全ては、彼女の為に

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