Licht der Hoffnung
□プロローグ
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目の前の光景が信じられなかった。
数時間前までは、父親が病気ながらに元気に笑っていた家。
その家が、崩壊していた。
家だけでなく、周りの建物も所々崩れ、半壊している。
ルカは呆然とした様子で持っていた本を落とした。
父親は病気で動けず、床に臥せている。
その場所も、崩れ去り瓦礫の山になっていた。
「――――――っ、お父さん!」
ルカはハッとした様子で、父親を悲痛な声で呼んだ。
返事はなく、ルカは足が縺れそうになりながらも瓦礫の山に走った。
「お父さん!……っ何処ですか!?お父さん!」
瓦礫を退かしながら、どうか逃げていて欲しいと心の中で思い続ける。
しかし、ルカの目の前に広がった光景は辛い現実だった。
「おとう……さん……?」
瓦礫を退かした場所には、父親らしき人物の手があった。
その手の周りには赤の液体が広がっており、鉄の匂いが充満している。
その液体が何なのか気付いたルカは、口元を手で押さえた。
「う、ぅ……ぅぇ……っ」
大嫌いな、血だった。
しかも、大好きな父親かも知れない人の血。
溢れ出る涙を止める事なく、無心に瓦礫を退かし続ける。
軈て、その手の持ち主の姿が現れ、ルカは両手で顔を覆った。
「う、うぅ…っ、おと、さん…お父さん…!!」
母親を亡くしてからたった一人で自分を育て、病気になっても笑顔を絶やさなかった父親の死。
目を背けたくなる様な現実に、ルカは意識を手放した。
少女の物語が、始まる―――――