Licht der Hoffnung
□ありふれた食事の風景
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漸く落ち着いたルカが改まってブルマ達にお礼を述べた後。
ルカは何故か、キッチンに立っていた。
(うぅ……私、料理するの好きだけど、美味しくないのに……)
数分前。
ルカは2日程眠っている間、その分の食事を摂っておらず、その事を思い出したブルマが今から食事にすると言った。
だが、常日頃から食事を作る機械がなく、味や栄養が不安だった為、トランクスが反対。
あろう事か、トランクスが栄養を十分に摂取出来、尚且つ素早く食べられるという理由でコンビニ弁当を取り出したのだ。
その為、料理が趣味なルカが、自分の為に、ブルマ達の為に作る事になった。
肩を落としつつ、ルカは素早く野菜を刻んでいく。
(でも…私に出来るとしたら、これくらい、だよね……)
料理は嫌いではない為、苦にもならないが、味が問題だった。
最近は、父には柔らかいおかゆばかりだったし、自分はといえば、手早く手間の掛からない料理ばかり作っていた。
誰かと食卓を囲む事も、手の凝った物を作るのも久々で、戸惑ってしまう。
(そう、でした…もう、どのくらい、誰かと一緒に食べなくなったのかな…)
父は介護なしでは食べられず、父を食べさせた後でルカは一人で食べていた。
幼い頃は家族一緒に食べていた事を思い出し、苦笑を浮かべる。
目まぐるしい忙しさの中、その思い出に浸る事も出来なかったと分かり、更に笑みが濃くなった。
(私の願いは…結局、叶わなかったな…)
母が死に、父が病に伏せた日から、ルカは願っていた。
いつか、また、家族揃って食卓を囲みたいと。
ルカはそっと目を伏せた。
家族はもう戻って来ない。
それが分かっているからこそ、諦めきれなかった。
だから、ブルマ達の『家族』になれて、心の底から嬉しかった。
もう一度、誰かと食卓を囲めると思うと。
キッチンから、ルカはリビングの方に目を向ける。
物影で見えないが、いるであろうブルマとトランクスを想い、口元を綻ばせた。
よしっ、と刻んだ野菜類はサラダにし、冷蔵庫にある材料を使って、出来る限り美味しい物を作ろうと、ルカは意気込む。
いつの間にか、戸惑いも忘れて、料理をする事が楽しくなる。
(何を作ろう…料理はあんまり作らないみたいだから材料も限られてるし……)
考えながらも、ルカは順調に手を動かした。