short
□空と海
1ﾍﾟｰｼﾞ/5ﾍﾟｰｼﾞ
*登場人物*
≫ソラ
ずっと塔の中にいる。
明るくて、素直。
≫カイ
力のある魔術師。美形。
｢お前はそんなところで何をしてるんだ？｣
いつものように、部屋にあるたったひとつの窓からぼーっと外を眺めていると、そんな問いが聞こえた。
…誰だろう。ここに人が来るのは、本当に珍しい。
しかも、たまに来たとしても、みんな気付かないで通り過ぎてしまうのに。
そう思って、下を見下ろしてみる。
……と、何だか、ものすごく男前な人がこちらを見つめているのと目が合った。
思わず、まじまじと見つめる。
綺麗なブラウンの髪に、整った容姿。
そして――意志の強そうな、眼差し。
｢なんか……物語に出てくる、勇者みたい。｣
ぽつりと呟くと、男は｢何だって？｣と聞き返してきた。
この高い塔の上と、男が立っている塔の下では少し離れすぎていて、声を張らないと聞こえないらしい。
｢…ねぇ、君、名前はなんていうの？｣
さっきよりちょっとだけ声量を上げて問い掛けてみると、男は驚いたように口をつぐんだ。
…何でかな？
｢……俺の名前は、カイ、だ。｣
少し間があって、男はそう答えた。
｢そう、カイっていうんだ。僕はソラ。……ふふ、海と空って、何だか似てるね。｣
｢……そうだ、な。｣
――それは、運命の出会い。
物語の、始まり――