とある少女の本能戦争(インティンクト)

□とある少女のお戯れ
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御坂美琴(レールガン)に絡む無知なチンピラ………」

目線を左にスライドさせる。

「良心からそいつに危険警告をする上条当麻(イマジンブレイカー)………」

また右に戻す。

「それを聞いて逆切れするチンピラ………」

そして奥の方から、チンピラの仲間と思われる男が何人も現れる。

「身の危険を感じた上条当麻(イマジンブレイカー)は逃走………。それを全員で追いかけるチンピラ………」

食事の御会計を済ませた、小柄なチンピラがいる。
いまどき珍しく愛嬌があった。

「ため息を尽きながらも、御会計を済ませて店を後にする御坂美琴(レールガン)………」

残されたのは彼女と店員だけになった。

「あの二人、おもしろそー………」

席を立ち、御会計を済ませにレジへ向かう。
料金は598円。釣りは402円。

「ありがとうございましたー」

店員の言葉を背に、店を出て黒いフードを浅くかぶり月光を浴びる。

「ちょっくら、お戯れでもしてあげるかなー」

月に照らされたその笑みは、純粋―――そのものだった。


ф


「ちょっとあんた………!」

「どうしたんですかー? 御坂美琴先輩?」

月明りの下。
先程のチンピラが、ボコボコに顔を変形させられて山積みに置かれていた。

「先輩って………! 私、あなたのこと全然知らないし!」

「私は知ってますよ。超電磁砲(レールガン)と呼ばれている先輩のこと」

そして、少女は御坂に微笑んだ。山積みにされたチンピラ共の上に仁王立ちをして。
刹那、背筋に寒気が走った。

「な、なんなのよあなた! 人の獲物勝手に奪っておいてその態度はーッ!」

少女から何かを感じ取り、不安にかられる。
なんなの―――?
誰なの、彼女―――?

「あんまり怒らないでくださいよー。こいつらは邪魔だと思って先に排除しておいたんです。先輩の獲物はきちんと残してありますから」

黒いフードをかぶった顔の表情、身体や容姿―――純粋そのものだ。
だが、中が、『黒い』―――!

「あーでも、ここで小鹿みたいに震えて立っている子は苛めないであげてください。彼、ちゃんとお金払ってたいい子さんですから」

今にも、泣き出しそうなチンピラの一人を呼びさして笑っているが―――危険だ。
何かドス黒い何かを感じる。
警戒を強めた御坂の体内から電気が迸る。

「先輩、どうしたんですか? 身体から電撃なんて出しちゃって」

「………あなた、何者?」

声を低くして聞く。
そうすると、彼女は笑いながら答えた。

「何者―――? 大丈夫ですよ、先輩。先輩が警戒するほど私は強くないので。能力値(レベル0)ですし」

「……………」

この少女が能力値(レベル0)―――?
あり得ない。
こんな普通の女の子が、どうやってこんな大勢のチンピラを倒すことができるのだ?

「信じてませんね………? 分かりました。じゃ、ゲームをしましょう。ゲーム」

そう言ってポケットから小銭を取り出した。
402円。

「あー、私、趣味で一円玉は集めているので100円玉でやりましょう」

「なにをするのよ? あなたも知ってると思うけど、私は学園都市に七人しか居ないレベル5のナンバー3よ。謝るなら………見逃してあげてもいいわよ」

「先輩、100円玉でも超電磁砲(レールガン)、撃てますよね?」

「撃てるわよ。例え10円玉でもね」

「なら、この100円玉四枚を使って、私を撃って殺してください」

サラリと、そんな危険な事を言う。

「あなた、何を言って―――!」

「もし、先輩が超電磁砲(レールガン)を撃ち尽くしても私が生きていたら―――私の事を認めてください。ほら、もう始まってますよ」

彼女は、そう言うとその場でクルクルと踊り、御坂を挑発し始めた。
一発、少女が生意気だし、顔面スレスレに撃ち込めば怯えて逃げるだろう、と考え撃つことにした。

―――ズギュゥゥウウウウンッ!

一直線に、音速の三倍で飛んだ超電磁砲(レールガン)は、狙い通り彼女の顔スレスレを通過した。
だが、相手は身じろぎ一つせず、ただニコニコ笑いながら言った。

「先輩、私は殺すつもりで来ないとかすり傷一つ付けられませんよ?」


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