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「俺のこと初めての親友だとか言っておきながらさ、真っ先に疑ってたよな?」
「しかも今まで散々引っ掻き回してきた狛枝の方がマシですって顔してたよなぁ……あれはさすがに傷付いたなー」
「なぁ、左右田。あれはどういうつもりだったんだ?教えてくれよ」
にこにこと、けれど声は低いままで問い掛ける。矢継ぎ早に喋ったからきっと今左右田の中で順番に咀嚼しているのだろう。早く、早く理解しなさい。
そして、可愛い顔をみせてくれ。
左右田が俺の望む表情になったのは、固まってから一分ほど経ってからだった。
全身がカタカタと震えうっすら涙を浮かべ、眉なんて思い切り下がっている。……おいおい鼻水も出てるんてすけど。
「ひ、な、た」
「うん、なぁに?」
「っう……ごめん、なさいっ…ごめ、なさ、ゔぐぅっ!!」
「……別にそんな軽い言葉が欲しいわけじゃないんだよなー」
左右田が謝ると同時に上に跨がり右拳を思い切り腹に振り落とした。筋肉質に見えて意外とモヤシな彼に耐えられただろうか。まあいいや。
ぶるぶる震えて涙腺が崩壊したかのように泣きながら嗚咽を漏らしている。両腕で殴られた腹を抱えたいのだろうが左右田の腰あたりに陣取った俺のせいで仰向け以外の姿勢がとれずその腕も行き場を無くしていた。
次の攻撃に耐えようと歯を食い縛り始めたのを見て、堪えきれずに吹き出してしまった。そんな俺を見てますます訳がわからないという風に見つめてくる。
堪らないな。
「はは、ごめんごめん。笑うつもりじゃなかったんだ……大丈夫。もう痛いことはしない」
「……ほん、と?」
「本当本当」
笑いながら左右田の上から退いて立ち上がる。心底ほっとしたような顔を見せる左右田。
あぁあぁ、そんな簡単に人を信じちゃって。だからお前は馬鹿なんだよ。
定位置に置いてあるものを見つけて触れるとピッと音がして部屋の明かりがついた。
「眩しっ!おい日向電気つけるならそう言えよ」
…………ほんっとに単純な脳の作りなんだな。
さっきまでの俺の怒りなんかなかったようにベッドにだらしなく足を伸ばして座りながらぎゃーぎゃー騒ぎ始める。
小さく溜め息を吐いてネクタイを緩めると、途端にしんとなって顔を真っ赤に染めた。
あー……明らかに勘違いしてるな。まあでもその方が楽しめるだろう。
取り払ったネクタイを持って再びベッドに座る。
可愛い可愛い俺の左右田。
「眩しい、んだったな」
「へ?や、今はもう割りと平気っつーか慣れたっつーか……あ……その、す、すすすする、んだったら……く、暗いほうがい、いいけどよ……」
「そっかそっか。了解」
「……え?ひな、た」
もうずっとつけているネクタイをこういう風に使ったことは無かったからうまくできるか少し不安だったけど……うん、中々の出来じゃないか?
「ほら、これで暗くなったろ?」
目隠し左右田、完成だ。
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