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□Do I ever ! 前編
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晴れて日向クンとお付き合いすることになった。
一ヶ月目。
手を繋いで、心臓がばくばくしてうるさくて、手は汗ばんじゃうしでも離したくなくて。
「狛枝の手、白くてすべすべだな」
なんて日向クンがはにかみながら言うものだから、頭がクラクラして死んでしまいそうだった。



二ヶ月。
ついにち、ちゅーをした!
しちゃった!
二人で図書館で本を読んでいる時に小さく名前を呼ばれて、振り向いたら日向クンの顔が目の前にあって……わあああ!思い出したら顔が熱いよ……
日向クンの唇は柔らかくて、温かかった。
「ご、ごめんこんなところで……我慢できなかった」
それでもこのあと二回もちゅーしちゃったし。
はあ……もう図書館で本読めないよ。思い出しちゃうからね!ちょっとだけ恨むよ日向クン。



そして今、三ヶ月目。
……別れの危機、です。

今日は大学がお休みの日だけど、ボクはカーテンも開けずマンションの自宅に引きこもっていた。いつもは日向クンとデートしてたけど……今は顔を見たくない。というか見せられない。
事の発端は、昨日の放課後デートの後だった。

学校から帰る時、日向クンが「明日は休みで、親が出張で家には誰も居ない」と言った。
いくら愚鈍で低脳なボクでも日向クンが何を言いたいのかはすぐにわかって、繋いだ手がまた汗ばんでしまった。ついに……この時が来た!
日向クンとお付き合いができる、と決まった日からいつかはするんだろうなと震える手でパソコンのページをクリックして、一人で冷や汗をかきながらイメージトレーニングをしていた。
その成果を出すときだ!なんて意気込みながら「おじゃまします!」と日向クンの部屋へ入った。
少し話をして、無言になって。
自然と近付いて段々深くなっていくキスをして、ベッドへと移動した。
二人ともなぜか正座で「おかしいね」なんて笑いあって。
とってもあったかい、幸せな空間だった。
―――――けど、それは日向クンの一言で一変した。



「その……俺は初めてだから、うまくできないと思うけど……が、頑張るから!」

「うん…………うん?え?」

「え?」



「俺は」って、日向クン、そんなのまるで



「え……狛枝、初めてだったのか……?」



―――――そこから先は覚えていない。
ただ、部屋の中の投げられるもの全て日向クンに投げつけたし、吐けるだけの暴言も吐いた。泣いて、喚いて、捨て台詞に
「日向クンなんて、だいっきらいだ!!!」



―――――これが、今に至るまでの流れ。
折角の休日に、日向クンと一日中一緒にいられるはずの日に、一人で怒って拗ねてベッドの中でシーツをぐしゃぐしゃに体に巻き付けてふて寝をしてる理由。
携帯なんて昨日からどこに置いたかわからない。おなかも空かない。
ただただ、虚しかった。
そんなに軽い奴に見えていたなんて。
何もかも日向クンが初めてだったのに。



「日向クンのばか」



枕をぎゅっと抱きしめて、今しがた暴言を吐いた相手に会いたくなってしまった自分が情けなくなる。
…………日向クン、何してるのかな。
ボクのこと考えてくれてるかな。色々投げてしまったけど、怪我してないかな。



(〜〜っだめだめ!考えない考えない!)



ばか、ばかばか。
なんで抱きしめてくれないのさ。
頭の中で八つ当たりをしながら、泣き疲れて眠りに落ちた。





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