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□大好き
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深夜、かちゃりとドアが開く音で目が覚める。



(……またか)



足音をたてないようにゆっくり、確実に自分が寝ているベッドへ近づくのを感じながら、日向の意識は覚醒する。
どうせ起きなければならなくなるんだから堂々と入ってくればいいのに。そう言ってみても足音の主は性格からか恐縮してしまい「ごめんね」と涙目になるものだから、それ以上は何も言えなかった。
ぎっ、と日向の顔の真横で足が止まる。小さく震える手が、そっと頬に添えられて。目を開けると申し訳なさそうに眉を下げる、可愛い恋人が居た。



「いらっしゃい、苗木」

「……ごめんね、日向クン」



今にも泣きそうな苗木を手早くベッドに押し倒す。安心させようと軽くキスをすると、溜まっていた涙が溢れてしまった。毎度のことながら可愛い恋人の涙は心臓に悪い。思わず顔をしかめると慌てたように「ごめんね」と目を擦ろうとする。



「……大丈夫だから。好きだ、苗木」

「んっ……うん、ボクも、好き……」



細い手首を押さえつけて涙を流す苗木にキスをする様は、まるで犯しているようではないだろうか。……実際は、逆なのだけど。

苗木と恋人になってからわかったことがある。
苗木の性欲が、ヤバい。
自分もそんなに淡白な方ではないし、好きな人と触れあえれば嬉しい。けれど、苗木のそれは常軌を逸していた。
軽くキスをすればガチガチに反応して抜くまで治まらないし、抜いたら抜いたで足りないらしく、突っ込んで朝までエンドレス……なんてことは日常茶飯事だ。それでも日向に負担をかけまいと何度か一人で処理をしてからのことだというのだから、もうどうしようもなかった。
今こうして深夜に忍んで来るのも、性欲がどうしようもなく止められなくなってのことだ。
それはほぼ毎晩なのだけれど。



「ひ、なた、く……ふああっ!あ、ぁ、ひいっ……」



腹まで反り返った苗木のペニスをしごいてやると、ばたばたと先走りの液が滴り落ちてくる。乳首を丹念に舐めて吸って押し潰せば、息を飲む音と共に生暖かい精液が日向の手にかかった。



「気持ちいいか?苗木」

「ん、ふぁ……いい、気持ちいいよぉ……もっと、ほし……してぇ、日向クンっ……」



出したばかりだというのに早くしごけと言うように再び日向の手の中で動き始める。精液を拭かなければ後処理が大変なのに、という考えは残念ながら今の苗木には届かない。まだ挿入もしていないのに肩で息をしながらもっともっとと全身で求めてくる苗木に、目眩がしそうだった。
それでも罪悪感が拭いきれないのか、苗木の涙と謝罪は止まらない。謝る理由などどこにも無いと言っても、触れる唇は震えたままだ。
優しい苗木は、できることなら一人で収めてしまいたいと思っているだろう。でもそれができず日向に迷惑をかけていると思い込んでいる。だから謝罪も涙も止まらない。
苗木が好きだと言ってくれるなら、例え睡眠時間がゼロになろうが空いている時間全てを苗木に費やそうがそれでもかまわないと日向は思う。



「苗木、可愛い……」

「んうぅ……ごめんね、気持ちい……あああっ!あ、んんっ、ひ、なたく、すき、すきいぃ……!」

「うん、俺も大好きだ」



優しい優しい恋人を、優しく優しくイかせてやる。
好きだと言う度に流れる涙も、全部舐めてやる。際限無く溢れる精液だって、一滴残らず出し尽くしてやるから。



(いつか、「もう無理だよ日向クン」って言ってくれたらいいな)



そんな希望を描きながら、日向は勢いよく腰をつき出した。




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