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□それは致死量の愛ですか?
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「日向クン……抱きしめてくれる?」



最近、狛枝は日向にお願いをするようになった。
大概が「キスしてくれる?」だの「あーん、してくれる?」だの実に可愛らしく恋人らしいお願いなので、日向は二つ返事で全て受け入れてやった。
そして今もまたお願いをされたので、所在なく棒立ちしている狛枝を手招いてソファーに座らせ、覆い被さるように抱きしめてやる。
望み通りにしてやると、狛枝の身体から力が抜けて溜め息が聞こえる。表情は伺えないが、きっとだらしなく微笑んでいるだろう。いつも、そうなのだ。



「力加減はいかがですかー?」

「ふふ、ちょうどいいでーす」

「それはよかった……さて、狛枝」

「ん?なあに日向クン」



腕を弛めて名前を呼べば、笑顔で顔を見せる狛枝。日向も優しく笑ってから、狛枝の唇にキスをした。



「え!?ひ、日向クン、それはお願いしてな……んんっ!」



目を見開いて日向の胸を押し返そうとするが、ソファーに沈められ上から押さえつけられてはどうにもならない。当然のように舌を割り入れて口内を丹念に舐め回す日向に、狛枝は全てがもう限界だった。
わざとらしく唾液の糸を引きながら唇を離す日向を睨み付けてやろうと頑張るも、無駄な努力に終わった。



「涙目。可愛いなぁ……あ、息整ったらまたするからな。早くしろよ」

「鬼!……ボクは抱きしめてほしいって言っただけなのに」

「ははっ、馬鹿だろお前」

「んなっ、ば、馬鹿ってなんだい日向ク……あ、やっ、ちょっと待って、ん、ふぁ、んんっ」

「待たない」



日向は、知っていた。
狛枝のお願いは恋人としての不安を表していること。どこまで受け入れてくれるのかと、日向を試していることを。
自己評価が極端に低くて自信が無くて消えてしまいたくて、でも、愛されたくて。それを日向に「お願い」という形で反応を確かめている。



(願いなんか、いくらでも叶えてやる)



ただ、日向だって狛枝を好きだ。だから恋人になったし一緒に居るのに、狛枝ばかりが日向を好きなのだと勘違いされては堪らない。
だから、日向はいつも狛枝のお願いの一つ先を行く。



「狛枝」

「ふぁ……もう、力はいんないよ……」

「それでいい」



狛枝の融けた瞳に自分だけが映るこの瞬間が、堪らなく好きだ。愛される自信が無いというなら、一生そのままでいい。
一生、愛し続けてやる。



「狛枝」



唇から溢れた唾液を舐め取ってやりながら、視線を合わせる。



「お前の終わりは、俺が決めてやる」



瞳を開いたまま唇を合わせると、狛枝のそれは細まって綺麗な水が溢れた。




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お題配布元:確かに恋だった

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