親ばかと子ども達

□赤司家の日曜日
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『うわ〜』


周りを見渡しながら歓喜の声を上げた玲那は隣に居た兄の方に向き直って、


『お兄ちゃん、りんご飴、りんご飴!!』


と、目を輝かせながら屋台のほうを指差した。そんな妹にため息をつきながら征弥は、


『そういうのはお母さんにでもねだれよ』


『だってママ居ないし』


は?と返して周りを見渡せば確かに母の姿が見当たらない。父の姿も見えない。二人してきょろきょろと辺りを見ながら捜索していると、母である実渕が帰ってきた。


『ごめんね〜。征ちゃん、将棋の大会に参加することになっちゃって〜
その手続きしてきたのよ』


どうやら、赤司のことを知っていたらしいその将棋大会の運営者が参加して欲しいと頼み込んできたらしい。断る義理も無かったので受けたらしい。征弥にとっては父が有名であることはとても誇らしいことなのだが、玲那にとっては一緒に祭りを回ることが出来ないのが不服らしく、先ほど買ってもらったりんご飴を食べながら膨れていた。


『お父さんの馬鹿・・・』


『仕方ないだろ。それにそんなこと言うと後が怖いぞ』


父のことを馬鹿扱いなどすればその者の末路など容易に想像がつく征弥は取り合えず妹には無事で居てもらいたかったのいで注意しておいた。だが、そんな兄の心など露知らず。玲那は遂に駄々をこね始めた。


『お父さんのバーカ!アーホ!オヤコロ!ズガタカ!』


『それは僕のことを言っているのかな、玲那?』


よく聞き慣れた大好きな声にバッと振り返るとそこには現在玲那の機嫌を悪くさせていた張本人、赤司征十郎が立っていった。
いきなりのことに、頭が動かない玲那に代わり征弥が赤司に問うた。


『どうしたんですか、お父さん?
将棋の大会に参加するとのことでしたが・・・』


『断ってきたよ。やっぱりたまの休みぐらい家族と過ごしたいじゃないか』


と、女も男も惚れ惚れするような笑みで応えた。そんな赤司に実渕は「かっこいいわ〜征ちゃん」と抱きついていた。
玲那はその父の言葉を聞いてから、父に思いっきり抱きついた。


『一緒に回れないと思っていたのでかなり凹んでいたんですよ。だから、さっきも罵声を・・・』


妹を庇うつもりで征弥は必死に弁解した。そんな子ども達を見て赤司は更に笑顔を優しくした。


『大丈夫。怒っていないよ。
今回は僕が悪かったからね』


と玲那の頭を撫でた。そんな父に機嫌を良くしたのか、玲那は、


『お父さん、りんご飴!』


『その、口に咥えている物はなんだい?』


『お父さん、僕はオレンジ飴で』


『私は征ちゃんが良いわ!』

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