親ばかと子ども達
□木吉家の日常
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木吉家と言えば、ご近所ではおしどり夫婦として有名である。
そんな木吉家の朝は、やっぱり甘々だったりする。
朝一番で起きてくるのは、長女の真結である。そんな彼女の仕事は家族を起こすことから始まる。
まず初めに向かうのは兄である優平の部屋。
遠慮なしに扉を開け放てば、布団を蹴散らしてアホ面で眠っている兄を見つけてため息を1つ。
『優平ー、起きろ、よ!』
普通に起こしたところで起きないのは分かっているので、優平の上にダイブ。案の定、『ぐほっ!?』っとむせていたが今は無視。
『真結〜その起こし方はやめろって言ってるだろぉ……』
強制的に起こされた兄は、まだ眠いのか、欠伸を噛み殺しながら恨めしそうに妹を睨んだ。
『なら、私より早く起きるんだな』
そんな視線はものともせず、しれっと返した真結は優平の部屋を出て隣の妹達の部屋に向かった。
兄の時とは違い、きちんとノックをしてから部屋に入る。
2つのベッドを見れば可愛い妹達は規則正しい寝息をたててまだ夢の中だった。
『真歩、真名、朝だぞー起きろよ』
そう言えば真歩はむっくりと無言で起き上がって、伸びをしてから、
『おはよう、お姉ちゃん』
とぼーっとした顔で真結に返した。
そんな妹に苦笑した後、おはようと返して、まだ目を覚まさない末の妹の元によって、その小さな体に合った小さな布団を引き剥がした。
『寒い〜……』
『なら、起きてさっさとリビング行け。暖房付いてるから』
身を縮こませる妹を抱き起こして立たせ、真歩と一緒にリビングへ向わせた。
『さて、と……今日こそ早く起きてくれたら良いけど』
苦労性の長女は、本日二度目のため息をしてから、両親の寝室へ向かった。
コンコンと2回ノックをした後、その眼前に広がる光景に毎度のことながらうんざりした。
『ん……ほら、早く起きねぇと用意できねぇだろ…』
『もう少しくらい良いだろ』
などと、吐き気がするくらい甘い雰囲気を醸し出している両親は現在ベッドの上で抱き締め合っていた。木吉鉄平は花宮、現在は木吉真を自身の膝の上に抱え、額にキスを落としていた。されるがままの花宮は、顔を真っ赤にしながらもうっとりと自分の旦那を見ていた。
『ママ、パパ、あのさぁ……』
『!?』
いい加減耐えられなくなった真結が話し掛ければ、花宮が面白いくらいにはね上がった。
『ま、真結、いつの間に……?』
『さっき』
『おぉ、おはよう真結』
朗らかに返す父を無視して、くるりと両親に背を向けた。
『朝ご飯は準備しとくから、後10分だけね』
ありがとなー、と返す父はやはり無視してさっさと部屋を出ていった。
おしどり夫婦の娘は大変だ。