親ばかと子ども達

□高尾家の日曜日
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人ごみがうっとうしい。
そんな中、緑間はうんざりしていた。
多分顔に出ていたのだろう。
隣に居た真子が心配そうに大丈夫ですか?と声をかけてきた。

『大丈夫なの、うっぷ・・・だよ』

『大丈夫じゃないんですね』

ここは遊園地。
緑間の旦那の高尾と息子である成未によってほぼ無理やり連れてこられたのだ。
自分をおいて二人はとても楽しそうだった。

『ひっさしぶりだなあ遊園地とか!』

『俺も!あ、ジェットコースター乗りたい!


そんな温度差を気遣って真子が2人をとりあえず落ち着かせ緑間のほうへ連れてきた。

『ねえねえ真ちゃん!
俺と観覧車乗ろうよ!』

満面の笑みで言ってくる高尾がうざくなって、

『黙れ、ついでに死んでこい』

『ひどっ!』

へこんでしまった高尾を見てから、今度は、

『じゃあ俺とジェットコースター乗ろう?』

首をかしげて可愛く成未が言った。
さすがの緑間も可愛い息子の頼みはそこまでむげには断れない。
しばらく、考えた後

『もう少し、俺が落ち着いたら、な』

『よっしゃ!
和くんに勝ったぜ!』

そこなのか、と思いながらも緑間は何も言わなかった。
すると、後ろからなにやらどんよりした空気を感じ取った。

『しんちゃーーーん・・・
なんでえ・・・・?』

『怖いからやめるのだよ!』

もはや一種のゾンビだった。
それを真子が抑える。

『和成さん、ここは家じゃないんで場所を考えてください』

冷静な子に育った、とどうでもいいことを考えてしまった緑間である。









〜ジェットコースター〜

『真ちゃんと一緒、真ちゃんと一緒♪』

緑間のとなりで成未はうきうき状態だ。
その後ろではようやく立ち直った高尾と真子
が居た。

『成未ずるいー』

口を尖らせて高尾が言うと、

『私のとなりでは不満ですか・・・?』

と悲しそうに真子が尋ねた。
すると、慌てたように、

『違う違う!
真子のとなりだって嬉しいに決まってんじゃん!』

という会話が終わった時にジェットコースターが動き始めた。

『うわ〜結構上っていくなぁ〜』

『だ、大丈夫なのか、これは!?』

のんきに言う息子のとなりで母はパニック状態である。
次の瞬間、最高点に達したジェットコースターはまっさかさまに落ちていった。

『『ぎゃあああああああああああああ』』

緑間と真子の絶叫が重なる中、

『『いえーーーい!!』』

高尾と成未はエンジョイしていた。







〜ジェットコースター終了〜

『もう二度と乗らないのだよ・・・』

ジェットコースターから降りた瞬間ひざから崩れ落ちた緑間は心底恨めしそうに成未を睨んだ。

『え〜
楽しかったじゃん!』

『恐怖しかなかったのだよ!』

隣でギャーギャーという中高尾と真子は、

『次、何乗ります?』

『そうだなあ、真子と真ちゃんやばそうだし、緩いのいくか!』

二カッと笑う高尾に顔を真っ赤にしながら真子は力強く頷いた。










〜数時間後〜

『いや〜遊んだな〜』

成未が満足気に背伸びをした。

『疲れたのだよ・・・』

結局あの後もいろいろ付き合わされた緑間は疲労がマックスだ。

『ねえねえ、最後に観覧車乗りに行こうよ!』

まだ諦めていなかったのか、高尾が切り出した。

『私はいいですけど、真太郎さんが・・・』

心配そうに緑間のほうを真子が振り返った。

『お前達は乗りたいか・・・?』

成未と真子を見ながら、緑間は尋ねた。
2人は顔を見合わせてから元気よく頷いた。

『そうか。なら乗るか』

『え、いいの?』

『自分から言っておいてなんだ、その態度は?』

『やったあ!真ちゃんマジ愛してる!』

言ってから高尾はガバっと抱きついた。

『は、離れるのだよ、和成!!』

顔を真っ赤にしながら緑間は高尾を引き剥がそうとした。

そんな二人を見つめながら二人の子どもたちは、

『ラブラブですね〜』

『ほんっと、羨ましい限りだよね』

高尾家の日曜日は疲れるけど楽しい日となった。

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