AFTER SUNSET

□親バカ、伯父バカ
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「山口くん!乗って乗ってー」
と、太一が手招きをする。



「はいはい…そんな急がなくても実家は逃げねーって…」
と、足を早める訳でもなく俺は太一の車に乗り込み、太一は車のエンジンを掛けた。



「さて出発!」
と、太一はアクセルを踏み込みNHKの駐車場を後にした。


今日は大晦日。


紅白でのステージで今年の仕事を終えた俺達は2人で俺の実家に向かっている。



「つーか…お前んとこ実家帰らなくていいのか?」
と、ふと太一に問いかけると…



「今年は親父とお袋でハワイだってさ…」



「あ…そう…」



「嫁さんに久し振りに会える…2週間ぶりだ…」
と、太一は顔を緩ませた。



太一の嫁さん。


イコール俺の妹。





今、あいつは実家にいる。


世で言う里帰り出産ってやつだ。


もうすぐ俺に甥っ子が出来る。



「もうすぐだなぁ…もうさ部屋中子供服だらけなんだよね…」
と、太一は既にまだ見ぬ我が子に親バカを爆発させている。



まぁ仕方ねーか…こいつらが結婚して2年。


初めての子供だもんな…



「太一がお父さんねぇ…なんか気持ちわりぃ」



「気持ちわりぃってなんだよ。まぁ…我ながら気持ちわりぃけどさ」
と、太一は苦笑いを浮かべた。



こんな会話をしつつ車を走らせる事1時間半。



実家にやっと到着した。



すると太一は車を停め、我先に車を飛び出した。



どんだけ早く会いたいんだよ…なんて半分呆れながら俺もその後を追うように実家の扉を開いた。



するとそこには…



「パパですよー。ただいまぁ」
と、大きなお腹を撫でながら顔をだらしなく緩める太一の姿。



やっぱり気持ちわりぃ…


「お兄ちゃんおかえり。ほらおじちゃんが帰ってきましたよー」
と、大きなお腹を抱えた我が妹を初めて目にしてちょっと感慨深かったりもする。



「おじちゃんですよー。はじめましてー」
と、俺もついついお腹の子にそう話しかけると…




「山口くん…気持ちわりぃ…」
と、太一はさっきのお返しかのように俺にそう言った。



しょうがねーだろ?



かわいい妹の子供なんだから。



太一…ぜってー大事に育てろよ!





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