小説

□季節は秋
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季節は秋。
辺りは紅葉に包まれ、静かな風が流れる。
中在家長次はこの季節が一番好きだった。


今日は土井先生と一緒に、山の紅葉を見に行く。
いつも忙しく、一緒にいる時間などほとんどなかったので、長次はわくわくしながら出かける準備をしていた。























しかし、長次は機嫌を悪くしていた。。

訳(わけ)を知るには少し遡る・・・

山に着いて少し経ったぐらいのこと。
「先生、紅葉が綺麗ですね。」
「そうだね。長次。でも・・・」
土井はすっと長次の頬に手を添えた。
「・・・先生?」
「長次の方がもっと綺麗だよ。」
「///先生!」


という他人から見れば、砂糖吐きすぎて糖尿病なるんじゃないかってぐらい
甘い二人だった。


・・・が


「長次、頭に葉がついているよ」
土井は頭の葉をとって微笑んだ。
「ありがとうございます・・・これ、紅葉ですね」
「本当だ。紅葉って食べられるのかな?」
白馬の王子のごとく輝かしい笑顔で土井は言った。
「・・・はい?」
長次はキョトンとした。
「どうした?長次。そんな可愛い顔して。そうだ。この山は、キノコがたくさん採れるらしいぞ。」
「え・・キノコ?」
土井は、なぜか食材の話をし始めた。一年は組の福富しんべヱの影響でもうけたのだろうか。
「どうした?今日は山の食材探しに来たのだろう?」
「・・・・え?」
今、この人は何と言った?
「あの・・・今日は紅葉を見に来たのでは?」
長次は恐る恐る聞いた。
「え!?だって長次、一緒に山を見回りませんかって・・・」
「だから・・秋に山を見回るといえば紅葉じゃないですか。」
もはや甘い雰囲気ぶち壊し
「いや、てっきり食材探しかと・・・本当ごめん」
土井は慌てて誤った。しかし、長次の機嫌はなおらない。
「もういいです・・・帰ります」
長次は来た道を戻ろうとした。
「ちょっと待ってくれ!なにも帰ることは・・・」
土井は急いで追いかけるが、長次はお構いなしにさっさと歩く。
それで、冒頭に戻るわけである。

長次は恥ずかしい思いでいっぱいだった。
乙女のように、土井と手をつないで歩いて・・・など想像をしていたのに
「長次!私の話を聞いてくれ!」
土井は長次の腕を掴み、うつむきながら言った。
「先生?」
「私は・・長次と一緒に山に来れて嬉しかったんだ。なのに、本当にすまない」
土井の言葉に、長次は驚愕した。
そうだ・・・大事なのは土井先生と一緒にいられることではないのか
「先生・・顔、あげてください。」
「長次?」
土井は恐る恐る顔を上げた。
「帰るなんて言ってすみません。私・・・土井先生といられるならそれでいいです。」
顔を真っ赤にしながら言う長次に、土井は胸が熱くなった
「長次!私もだ。さあ、一緒に山を歩こう。」
手を差し伸べる土井に、長次はそっと手を伸ばす。
触れた手はとても暖かかった。




「長次・・・」
「なんですか?先生。」



「好きだよ」
「///・・・私も好きです」






























後に、この二人を見た糖尿病患者が増えたことは言うまでもない

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