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□苦手なものと好きな人
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ぽかぽかと秋ではないような日差しが当たる五時間目。
窓際の中間、隣は亮太、前は薫、後ろは凪、薫の隣に神というなんとも素晴らしい席の位置と
今日の朝練のせいもあり、意識が夢の中に落ちようとしていた。

だが、易々と寝ようかとか、そういうわけにもいかない。
今の時間は、担任である真田総一郎先生の授業中。
寝たりなんかしたら、少しあどけなさの残るあの凛々しいお顔と心地よい声が拝めないし、聞けない。
でも眠い。
一体、僕はどうすればいいのだろう。

「(う〜…)」

ついでに、僕の古文嫌いが発動してしまったらしい。
このままでは、先生より睡魔が勝ってしまう。
愛が、愛の力がこのまま不義の睡魔にやられるというのか。
まずい。それだけは非常にまずい。

あぁ。そうだ!

ノートを一枚ビリビリと破り、そこに亮太へのメッセージを書く。
そう、中学校等で流行る授業中での手紙交換。

先生にバレないようにするスリルはたとえ内容がつまらなくても楽しくさせてしまう効果を持ち、中毒性を発揮させる。
なんと末恐ろしい遊びだろう。

「(亮太へ。この前、雑誌に載ってるのみたんだけど、駅前にケーキ屋が出来たんだって。
今日の放課後、行かないか?……っとコレでよし。)」

机にうつぶせになり、もはや授業が子守唄と化している亮太の机に手紙を置くと同時にそれを思いっきり叩く。
バンっつと物凄い音がして、先生の視線がこっちに向いた。
これがほんの少しの目的でもあったが、先生の授業に寝ていた、というコイツの行動への罰でもあった。

「ど、どうかしたんですか?」

「先生、虫が止まってたんで、この馬鹿を起こすついでに粛清しました。」

「うおっ…。うるせぇよ―…。佑太、寝かせろっての」

「バカ太が寝てるのが悪い。」

「んぁ?」

「岡村君、寝てたんですかっ!?…む、では罰として52ページを読んでください。」

「うげっ。覚えてろよ、バカ佑太」
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