□Real-Matrix:ADDITIONAL
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#5 各々の戦場へ Ready to Fight!:Lordknightmon
(どこから現れた――?)
それは、証明不可能な命題に等しかった。
輝一とエンジェモンという無害な存在を前にしてもなお、ロードナイトモンは感覚センサーは切らずに最大精度で起動させていた。警戒は怠っていないはずだった。
しかし、感知出来なかった。敵の来襲を。
敵は何処からともなく現れたのだ。
痕跡を残さぬ、巧妙に組み立てられた転送プログラムを用いたのか。
この敵が、自分で組み立てたのか。
もう一つの可能性に、ロードナイトモンは思い当たった。
(――いや、オリンポス十二神族の中に、このような転送術を持っている輩がいるのかも知れん)
然らば、眼前の敵は十二神族の徒党、或いは――下僕ということになる。
とても、認められるような話ではなかった。
(奴は、おそらくイグドラシルに衷心より忠誠を誓っていないような輩であり、利害の問題で誰かと手を組むような浅ましい輩でもない)
少なくとも、自分の知っている、同じ姿を共有する者は。
薔薇輝石の長身よりも二回りほど大柄から放たれる、大気をびりびりと震わせるような威圧感。竜爪を模った鋭利な装飾をそこかしこにあしらった、純白の鎧を纏う、竜の騎士。
ロードナイトモンの電脳核記憶領域は、その姿を知りすぎていた。
破壊衝動に身を任せ、サーバへの脅威となりやすいウィルス種を主な粛清対象とするため、ワクチン種が殆どである聖騎士団において、唯一「データ種」――善悪を超越した属性を備えている、いわば特異点。
(デュナスモン――まさか、貴公と相対するとは)
まさか、同胞と相対するとは考えもしなかった。
それ以上に、ロイヤルナイツが来訪するとは、やはりこれは相当大きな事案だということだ。
サーバの脅威となり得る異分子として、自分達を始末しに来たのか?
だとすれば、皮肉な事だ。
自分も、異次元にてその役目を担っているのだから――
ロードナイトモンは、兜の下で皮肉な微笑を浮かべた。
だが彼にとって、同胞との遭遇以上に驚愕すべき事があった。
輝一が、デジモンになったことだ。
デュナスモンの姿を確認した瞬間に、彼は伝説に聞く“デジヴァイス”のような機械を握り込む。
もう片方の手から、白光を放つコードの連なりが溢れる。
それをスキャンするように機械の側面をコード上に滑らせると、やがて螺旋状に渦巻いていたコードが解かれ、輝一の周囲を何重にも取り巻くように広がる。
彼の肉体はそのコード空間の中で二進数との境界を失い、幻影の如く揺らめいていたものの姿と重なり――
――“進化”を遂げた。
漆黒の獅子の鎧を纏う戦士へと。