Matrix-1
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 再生プログラムは、恐るべき代物だ。
 幾度破壊され粒子に変ぜようとも、周囲に浮遊する0と1の断片を拾い上げ、再びその煌びやかな姿を取り戻す、ロードナイトモンの鎧より伸びる黄金の帯刃もその一つだった。
 デジモンは微々たるデータの破損ならば、数列間の欠損を0と1の自動挿入により自然回復させる。しかし余りにも破損データ量が多すぎると、電脳核は欠損部分に元々どういう数列が存在していたか推測できず、修復できない。
 このデジモン最大の欠点を補強できるのがかのプログラムで、理論上は電脳核を破壊されない限りはどれだけ負傷しようと絶対にデリートされない。だがその代わり作成するのは至難の業で、デジモンに組み込むのもまた至難の業。自負にかけてそんなもの要らぬ、というロイヤルナイツ勢で唯一ロードナイトモンは作成に成功したものの、電脳核に再生プログラムを組み入れることが出来なかったので、帯刃しか再生させられなかった。
 
 眼前のデジモン――デスモンに、とてもプログラムを作る能力があるようには見えない。ならば自ずと、この魔王にプログラムを組み込んだのは、唯ならぬ力を持ち合わせる存在――恐らく七大魔王の一角――という結論に至る。
 さて、その再生プログラムは翼だけに適用されたものか、はたまたは。しかしいずれにせよ。

 「電脳核を直接破壊せぬ限り切りが無かろうな――」

 デュークモンの言葉にマグナモンは歯噛みし、然りと頷いた。策を求め冷然としているつもりかも知れないが、明らかに紅眼に焦燥の色が透けて見えている。

 「ああ、こうなれば、下手な鉄砲も何とか――だ」
 
 相手方がデスアローを乱発したのと同じ風にやってやる。やけを起こしたような台詞を呟いたマグナモンに対し、デュークモンは一瞬眉を顰めたが、口出しはしなかった。一度静観を決め込んだ身。マグナモンがデリートの危機に陥るまでは、手出しもしないという事で姿勢を一貫させる。

 「焦熱に、電脳核の跡も残さず蒸発し果てるがいい!」

 マグナモンの両掌に目映く爆ぜる球形プラズマが生み出される。  

 「“プラズマシュート”!」

 宙で泰然と静止する異形の魔王向けて、それを立て続けに投擲する。デスモンは今度は下方に退いて避けたが、そう甘いものではなかった。
 第三撃、第四撃、更には第五撃−−いや、数えるのも煩わしい程の球形プラズマが、一瞬の間も置かず流星群の如く襲いかかってきたのだ。
 
 デスモンの巨大な単眼の捉える世界が、烈しい耀きに満たされる。視覚センサーが焼き切れる程に――構成する数列が四分五裂し、消滅する程に。デュークモンも遠目でも目が眩みそうになり、双眸を素早く伏せる。
 だがしかし。
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