□Real-Matrix:ADDITIONAL
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突如、信也が口に含んでいた液体を吹きだした。
そして激しく咳き込んだ。
マグナモンが怪訝な目でその様子を見ていると、友樹が打って変わって真剣な目をして、信也に言い聞かせた。
「信也! 殴っちゃだめだよ!」
「げほっ……分かってるよ! さすがにもう『ロイヤルナイツ』ってだけでぶっ飛ばしたりはしねえよ!」
マグナモンの石榴石の双眸が軽く見開かれ、次いでぞっとする程座った。
情報処理機構が、二度目の錯綜をする。
――今、何と言った?
「ぶっ飛ばした」と言ったのか?
信也に問い質す声は背筋が凍り付く程に底冷えしていた。夜の寒さのせいばかりでは決してない。
「信也、貴様……ロイヤルナイツを『ぶっ飛ばし』た事があるのか?」
「あれは事故だから! あと正確には人違いだったし! そもそもこの世界に昔いたロイヤルナイツがとんでもない悪党だって聞いてたから」
微妙に身震いしながら大声で弁明をする信也は――決定的な一言を放った。
破滅への一言を。
マグナモンの額に青筋が立った。浮き上がったその筋がぷつりと切れ、溶岩が噴出してくるのも時間の問題だ。
「ぶっ飛ばした」際に何があったのかは知る由もない。そして知る必要もない。世界の平定を至上の使命として掲げた騎士達に方法論の相違こそあれど、悪党など一人として居るわけがない。例えば、大義を忘れ、こそこそと影で私益のためだけに他を犠牲にする者など。そんな騎士の名折れ、神が選ぶはずもない。
子供だろうが、リアルビーイングだろうが、もはや手加減無用。
騎士の誇りを穢した者は、一対一で成敗してくれるのみ!
マグナモンは片膝を立てると、鎧が擦れ合う金属音ががしゃりと警告の如く響いた。人生に終止符を打つ覚悟はあるか――と。
そして決闘の開幕が宣言される。
「ロイヤルナイツを悪党呼ばわりするとはいい度胸だ。立て」
信也は顔面蒼白で叫んだ。その必死なこと、哀れという他にない。
「ち、ちょっと待て! これには深ーい訳があるんだ! 聞いてくれっ!」
言い訳無用。マグナモンの爪が月光を浴びて冷ややかに燦めいた。
夜明けにはまだまだ遠い。