Real-Matrix:ADDITIONAL
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#5 各々の戦場へ Ready to Fight!:Lordknightmon

 ロードナイトモンは思い起こす。
 先程聞いた説明の中にあった、古代十闘士の力の結晶である「スピリット」を用いて換装し、自らが十闘士の継承者となって戦うという話を。

 常識に照らし合わせて不可能な事象に対する疑念が、説明を受けたときは拭えなかったが、実際目の当たりにすると、厭でも信じざるを得ない。
 そして理解する。
 ――此処が異次元のデジタルワールドなのだということを。
 
 その輝一は今、槍を握り、敵の一挙一動を注視しながら、様々な負の感情が渦巻いた視線を彷徨わせていた。不覚を取った事に対する後悔か、意識外で敵の接近を許してしまったことへの疑問なのかは分からない。
 幾百という聖戦に身を投じてきたロードナイトモンの目から見て、彼の佇まいは立派な熟練の戦士のものだった。
 スピリットの記憶が、彼の肉体と同期しているが故の現象なのか。
 それとも、彼自身が激闘を潜り抜け、薄氷を踏むように勝利と命を拾い続けてきたからなのか。
 後者だとしたら、哀れなものだ。

 ロードナイトモンがそう考えた刹那、攻撃は唐突に始まった。
 デュナスモンの掌底から、弾けるように強烈な光線が放たれる。
 輝一の背後――エンジェモンの胸部中央へと。
 エンジェモンは、咄嗟に左に跳んだ。急所から見事に光線が外れる。
 だが、無傷では済まなかった。
 右の二枚の羽と腕に光線が直撃した。低い呻き声が上がる。焦熱で灼かれ、黒く炭化したのだ。
 黒獅子の戦士――輝一が声を張り上げて、傷を負った天使に呼びかけた。

 「エンジェモン、ここは任せて。城にこの事を伝えてください」

 彼はよろめきながらも、何とか夜の深林の中へ駆けて行った。城、彼処に彼の仲間が住まうのだろう。

 デュナスモンは真紅の双眸に嘲弄の色を浮かべて、哀れな遁走者を見やった。

 「あれはオレンジの坊主が進化した姿か。まあそれはいい」

 次いで、視線は薔薇輝石の華美な長身へと移される。
 敵の目が怪訝そうにすがめられる。

 「本当にロードナイトモンか? 雰囲気が違う……何より、なぜ十闘士の側に立っている」

 デュナスモンの問いに、ロードナイトモンは沈黙で返した。
 自分にとってみれば、愚問と言わざるを得なかった。本当にロードナイトモンかと言われればそうであるし、何故十闘士の側に立っているのかと言えば、成り行き上そうなったという以上の理由がない。

 そして、問い掛けたいのは寧ろ、ロードナイトモンの方だった。

 貴公こそ、本当にデュナスモンか――と。
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