Matrix-1
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 「まさか貴様が……ロードナイトモンを手にかけたというのではあるまいな!?」

 だからドルモンが無事にリアルワールドに渡れた事なんぞ知っているのだな――マグナモンの激昂にも似た問い掛けに、単眼の堕天使はかろうじて聞き取れる程低い声で笑った。デスモンの笑い声は、乾ききった枯れ木がばきばきと折れるような音に酷似している。

 「ワタシデハナイ。『ワタシ以外ノ魔王』トダケ言ッテオコウ。実際ニコノ目デ見タ訳デハナイガナ……クカカカカ」
 「他の魔王だと……!?」

 マグナモンが咄嗟にデュークモンの顔を覗き込んだ。甲冑の騎士も目を合わせ、静かに首肯する。今や二者の思いは同じだ。
 間違いない。魔王連中ぐるみでロードナイトモンを抹殺し、ドルモンをも消去する計略を立てていたのだ――そう確信する。
 しかし、ドルモンが無事にリアルワールドへ転送されたという知らせで安心する余裕などない。どうやって自分達ロイヤルナイツの計画が実行される事を突き止めた? 新たな疑問が浮き彫りになる。それを聞いたところで、デスモンが素直に解答をくれるとも思えない。

 しかしどうしてもはっきりさせねばならないのは、デスモンが未だその身を漆黒に染めてはいない事についてだ。デュークモンは訊く。

 「デスモンよ、貴様は仮にもまだ中立の立場を保持しているはず……我らロイヤルナイツに敵対するも、他の魔王共に肩入れするも、あり得ぬとばかり思っていたが」
 「ソウダ、ワタシハ未ダ中立。シカシ、命令ナラバ本意ニアラズトモ実行スルノガだーくえりあノるーる……ククク」

 衝撃的な答えだった。デスモンが自分の意思で此処に来ているのではなく、何者かの命を受けているに過ぎない。命令ならば自分の立場をねじ曲げる事も厭わないのだ。そして、デスモンを上回る力を持っているであろう魔の者といえば、数える程しか存在しない。
 つまり、七大魔王。

 「誰の差し金だ」
 「ククク……貴様ラナラバ見当ガ付イテイルノデハナイカ」
 
 答えになっていない答えに、マグナモンは舌打ちをした。向こうに教える気は更々ないらしい。
 異形の魔王は地の底から響くような声で再び嗤い、守護騎士達の反応を嘲る様に楽しんでいる風だった。

 「ククク……ソンナ事ハ置イテオイテナ。ワタシガサル事ヲ知リ得タノハナ、『ぷれでじのーむ』ニ接続シタアル者カラ、カノでじもんガ生キテイルト聞イタカラダ」
 「……何と言ったか?」

 信じられず、問い直すデュークモンを嘲るようにデスモンが答えた。
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