Matrix-1
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 デスモンの眼は尚も薄ら寒くなるほどにぎょろりと開かれていた。いや――疾うにこの世界を、見てはいなかった。

 「クカカカカ……愚カナ」

 嘲笑う地の底より響くような声だけが、ロイヤルナイツ二者の存在する次元に残される。
 閃光の炸裂する中、デスモンは姿を消していたのだ。
 
 「消えた……!?」

 プラズマシュートを乱発しながら異変に気付くマグナモン。プラズマ生成を中止し、呆然と立ちすくむ。
 
 「ククク……最初ニ言ッタダロウ。貴様ニコノワタシガ倒セルカノト。あーまー体」
 「!」

 忽然と、背後より身の毛もよだつ重低音の声がした。
 黄金の竜戦士は警戒と別の理由で身を固くし、さっと振り返る。
 光線が放たれた。
 一所に収束した濃密な黒霧、そこからただ一本突き出た腕――その開かれた掌底に埋められた単眼より。

 「ぐおっ……」

 生体感覚センサーを振り切らせる激痛に呻く。マグナモンの纏う黄金鎧の左胸側部が穿たれ、守られていた生体部分まで貫かれた。

 「マグナモン!」
 
 デュークモンが思わず声を上げる。手を出すか、出さまいか――その瀬戸際で逡巡し、かちゃかちゃと槍を鳴らす。
 振り返ったはずみで狙いが逸れたものの、仮に反応が遅れていたとしたら胸の中心部を――電脳核をもろに死の矢が鎧諸共貫いていただろう。
 何とか後方へ――崖の外、海側へと飛び退き、浮力生成プログラムを起動して宙に浮かぶ。
 しかし、後ろに逃げようとも同じ事だ。
 再び死の光線が背後より閃き、今度は剥き出しになった右脇腹を突き抜いた。青い竜体を構成していた0と1が虚空に散り、灼けるような激痛が全身を駆け巡る。思わず気が散り、浮力生成プログラムが停止しかけマグナモンは海に墜落しそうになった。

 「ぐうっ……」
 
 苦痛に顔を歪めるマグナモン。デリートされるという程の損傷では幸いないが、意識に時折ノイズが入る。それを何とか堪えるようにし、マグナモンはひとまずはと再びライトオーラバリアを展開させる。デスアローの脅威を回避した形だ。
 迂闊だった――とマグナモンは内省する。デスモンと遭遇した時、奴の姿は確認不能だった。あれを別次元から移動最中だったものと考えると、デスモンが瞬間移動能力を有している事は容易に予想が付く。
 一方で、デュークモンは早い段階で気が付いていた。それ故に、マグナモンがプラズマシュートを乱発するという暴挙に出ようとした時嫌な態度をしたのだ。
 しかし、最善の攻略法がマグナモンにないのもまた事実だ。
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