□Matrix-1
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小学生だろうか、あまり背の高くない小柄な少年達だ。うち二人は厚ぼったいスキーウェアの様なものを着ているが、もう一人は何故か半袖短パンという季節感のなさ過ぎる格好をしている。
ドルモンはまだきんきんと冷える口を渋っ面で閉じて、さっと雪山の中に飛び込んだ。まだ積もったばかりなのだろう、固さはなく、ドルモンがその中にすぐ隠れるには十分だった。それに、寒さは体毛がどうにかしてくれるので大丈夫だ。
(これが〜……にんげん〜?)
目だけ出してドルモンは近づいて来る三人組をまじまじと物珍しそうに見る。
二本の腕を持っていて、二本の脚でまっすぐに立って歩いている。それが大抵の人間の特徴だそうだ。
彼らがリアルワールドの主要な住民であること、デジタルワールドを作ったのも人間の中の一人であること、デジタルワールドにいる全ての者は、リアルワールドに存在するものをモデルとして作られていること。
そして、「テイマー」は、人間しかなれないこと。
などなど、ロードナイトモンに教えられた事を思い出す。
とすると、ロードナイトモンもこの人間をモデルにして出来たんだろうか? それにしてもちんちくりんだ。
(でも〜ロードナイトモンずっとせがたかくてきれいだった〜。こんなんじゃない〜)
少年達はまだ幼い子供なのだからそんな事は当たり前なのだが、これも仕方ない。
と。
半袖短パンの少年と、ドルモンの視線が交錯してしまった。
じーっと見つめ合う悪戯っぽい黒い瞳と無邪気なトパーズ色の瞳。その間、約三秒。
「あれ何だ?」
半袖短パンの少年は立ち止まり、雪山の隙間からのぞく奇妙な二つの目を指差し他二人に話しかける。
スキーウェアの少年達はそれにつられて立ち止まり、訝しげに指の差す方向を見る。
しかしそこには白く積もった雪山があるだけだ。
「何だよお前変なやつだな、ただの雪山じゃん」
「冬にそんな格好して歩いてるから、頭おかしくなって変なもん見えたんじゃねえの?」
「ち、違えよ! ホントに今、あそこの雪山から何か見てたんだって!」
半袖短パンは仲間の冷たい態度に声を張り上げて必死で訴える。
当のドルモンはといえば、雪山にしっかり潜ったのでもう姿を見られる心配はない。
しかし、それは浅慮というものだった。
「じゃあ、あそこ掘ってみればよくね?」
「あ、それ名案」
少年達は意外にも頭の回転が速かった。三人の子供達はドルモンの潜伏している雪山に近付くと、各々容赦なく雪をかき出し始めたのだ。