□Matrix-2
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何処で、なにゆえ事情がねじ曲がったのか。まるで状況が把握できない。
それはヴァルキリモンも同じだった。お手上げとばかりに、渋面を伏せた。
「――こちらとて、話は又聞き状態ですので、実際の事情は分かりかねますが……確かに、訳が分かりませんね。――あっ」
彼ははっと頓悟したような表情をすると、急いで懐から再び例の端末を取り出し、デュークモンにも音声が聞こえるように設定を変えると、画面に向かって呼びかけた。
「サー・佐伯、わたしです。ヴァルキリモンです」
『ああ。どうした?』
「ヘイムダルでデュークモン様の位置情報を特定願います」
『了解だ』
しばらくの間、沈黙が流れた。張り詰めた面持ちで、デジモン二体はそれを守る。一分程度経ったと思われるそのとき、端末越しに呟きが零れた。
『……出ない』
「え?」
ヴァルキリモンが、思いがけず半音高くなってしまった声で聞き返した。
『データベースにあるデュークモンのデータと照合しつつ、特定しようとしたが……そもそも、データベースにデュークモンのデータが存在していないという結果しか出ない』
「なっ……」
鳥人は端末を握りしめたまま呆気に取られ、騎士は殴られたような衝撃に立ち尽くす。二者はどうしたらいいのか分からないという風情で、視線を交錯させる。
ややあって、デュークモンが何かに気付いた様子で問い掛けた。
「ヴァルキリモン、こちらのデータベースは、独立したものか?」
「いいえ、基本的にはイグドラシルのそれと連動しています。あちらから、データを引っ張って来ているようなものです。ですから――」
ヴァルキリモンはそこまで言うと、あっと口を閉じた。その理由を察しつつ、デュークモンは首肯する。そして、厳粛に後を受けた。
「何者かがイグドラシルのデータベースから、このデュークモンの存在を抹消した――ということであろうな。そして、そのような真似が出来る者は――」
「――ロイヤルナイツのみ、でしょうね」
漆黒のバイザー越しに、純白の鳥人はいつになく深刻な表情をした。