BLEACH 中編・長編

□3.数十年前B
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「何をやっているんだネ。早く持ってきたまえ」


「う、ぐぅ…」


ここは十二番隊技術開発局。日々研究開発を重ねている彼らは今日も大忙し。


十二番隊に入隊した杏は今、開発に必要な道具が入っている箱を運んでいた。前が見えない程大量の道具。大きいに付け加えてとてつもなく重い。それを十二番隊隊長兼技術開発局長の涅マユリは急かす。


「それを置いたら大型ネジを50個程持ってきたまえ」


「50個!?無理ですよ!」


「分担して持ってくれば良いだろう。少しは考えたらどうだネ」


(何往復!?)


大型ネジは杏の拳位ある重さが400gあるネジだ。総合重量20kg。箱に詰めて持ってきても、杏の力的に考えて最低二往復分。だがそれは今までの往復で体力が削られていない状態での計算だ。今は3往復は必要だろう。


(こき使われ過ぎて両足が生まれたての小鹿状態っ。手にも力が入らないっ!)


いつからこき使われてたかと言うと早朝5時に叩き起こされ、現在の午前11時までの6時間ずっとだ。他にも作業をしている者は居るが、早朝に叩き起こされたのは杏だけ。


入隊してから何故か杏だけがこのような扱いを受けている。確かにマユリは人使いが荒いが、杏に対しては一層である。杏は、自分はマユリに何か粗相をしていただろうかと悩む。


正直な所たまにツッコミを入れてしまうが、怖くて言いたい事を言えない為、マユリの気に障る事をした覚えが全く無い。1度副隊長である涅ネムに聞いてみたのだが…。




-マユリ様はあなたの事を気に入られています。根倉で弱そうでこき使いがいのある小娘だと。つまり、一目惚れです。


-そんな一目惚れ嫌過ぎる…!!




自分のマユリからの第一印象が酷過ぎて泣けてくる。初めてされた一目惚れがあんな恋愛のれの字どころか変換前のローマ字にすらなっていないマッドサイエンティストだなんて。それも一目惚れの意味が激しく違う。


なんとか体力の限りでネジを運び終えると、その場に膝から崩れ落ちた。それを椅子に座りながら見下ろすマユリは溜め息を吐く。


「何を休憩してるんだネ。次は地下にある鉛縦1mと横60cm、幅2cmの板を30枚持って来てくれたまえ」


「地下!?鉛!?30枚ぃいい!!?」


「煩いヨ」


杏は目玉が飛び出す程に驚愕し絶望した。正確な重さは分からないが、鉛とは金属の中で1番重いと知っている。それをマユリが言った採寸の物を持ってくるとなると、1枚でもとんでもない重さだ。


因みに鉛をマユリの言った大きさで計算すると、1枚120kg以上である。流石にそれを1人で30枚は死ぬと思った杏は抗議した。


「く、涅隊長!流石にそれを1人で持ってくるのは……しかも地下だなんて…」


「台車を使えば良いだろう」


「だとしても重さ的に考えて1人はきつ--」


「口答えすると言うのかネ?」


ビクゥウウッ…!!


若干楽しそうな笑みを浮かべながらのマユリの言葉に大きく体が跳ね上がる。「しまった…」とダラダラと冷や汗を滝のように流す。
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