BLEACH 中編・長編
□8.交差する想い 前編
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翠が護廷に入隊して初めて所属したのは十番隊だった。ギンの推薦だった為三番隊と言う案もあったのだが、最終的に配属されたのは十番隊だった。
当然の如くギンからは大ブーイングがきたが、決定してしまった事は仕方が無い。その時は妙に構ってくる隊長としか思っていなかったのでどうでも良いと思っていた。
「いやぁ、入隊して直ぐに席官だなんてやるなぁ2人共!」
「「ありがとうございます」」
2人とは、翠と同時期に入隊した冬獅郎だ。翠が六席で冬獅郎が五席だ。一心も乱菊も入隊当初から良くしてくれる。
「冬獅郎は小さいなぁ。もっと飯を食え!」
「余計なお世話だっ…です……しっかり食べてますよ」
「本当かぁ?翠を見ろ。俺がやったやつなんでも食べるぞ!」
そう言う一心が向ける視線の先には翠が一心から貰った爆弾おにぎりを食べている姿が。だが時折眉間にシワが寄っているような気がする。
「梅干し、嫌い…」
「何だと!?梅干し旨いだろ!好き嫌いしないでしっかり食べなさい!」
「嫌いなものは嫌いです」
「食え‼️」
「ちょっ…!」
爆弾おにぎりから梅干しを抜いている翠の口に、抜かれた梅干しを捩じ込もうとするが、翠は必死に拒否する。そんな様子を溜め息を吐きながら見て冬獅郎は昼飯の続きを食べ始める。
ギンが翠を構うのは当然の事で、その際乱菊が加わるのも当然の事。
「翠クン!十番隊に慣れた?嫌になったらいつでも三番隊に来てくれはってええからなぁ」
「ちょっとギン!嫌になるってどう言う事よ!杞宮の事は可愛がってんだから嫌になる訳無いでしょぉ!?」
乱菊と共に書類を運んでいる最中に現れたギンの言葉に心外だとばかりに乱菊が反論する。
「別に乱菊に向けて言った訳ちゃうよ?ただ入隊したてで大変やろなぁって言っただけやん」
「だけじゃないでしょうが。推薦までしたのに自分の隊に入れれなかったからって僻まないでよねぇ」
「キッツいわぁ、乱菊」
「本当の事じゃない」
この2人は良く翠を挟んで口喧嘩を始める。そしてその度に翠は思う。
「痴話喧嘩は俺が居ない時にしてください。俺思いっきり邪魔じゃないですか」
毎回思っていた事が遂に口に出てしまった。するとギンは若干焦ったように弁解してきた。
「ちゃうで翠クン?乱菊とは幼馴染みってだけで、こんなんいつもの事やん!(変な誤解されたら敵わんわ…!)」
「いつもの事って…今度は惚気ですか?これだから邪魔者は引き立て役になんないといけないから嫌になりますね」
「誰も翠クンが引き立て役なんてゆてないやろ?そもそも翠クンに会いにわざわざ来たんに」
その言葉に乱菊は少しムッとしてフンッと背を向けて歩き出してしまった。
「行きましょ杞宮!ギンなんか無視しなさい、無視!」
「はい」
「ぇえ!?そこははいゆうたらあかんで…!」
この後本当に1日中無視し続けた翠にギンはショボンとしていた。何故か放っておけずやはり構ってしまうのであった。