BLEACH 中編・長編
□9.交差する想い 後編
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ここは十三番隊隊舎。その中の一室に翠が住んで2週間。フレンドリーな隊員が多い故に少しずつ馴染めて来たが、力が制御不能になる事はたまにあった。
そんな時はいつも十四郎が傍に居てくれるので、優しくて共に居ると安心する十四郎が大好きになった。何故十四郎と共に居るだけで安心するのか、触れ合うだけで制御不能の力が静まるのかは分からないが、莉乙と杏以外に親しい人物が出来た事は喜ばしい事だ。
友人が多い方では無い翠であるので、友人枠には入らないが大好きだと思える十四郎のような人物はとても大切だ。翠が十四郎に懐いている事は周知のうち。
「市丸隊長、なんで居るんですか?」
「翠クンに会いに来てん」
「はぁ…」
ギンが翠にベッタリなのも同じく周知のうち。今ギンは翠の部屋へ遊びに来ていた。だが翠は出掛ける準備をしており、たった今終わった。
「何処行くん?」
「浮竹隊長が散歩に行くって言っていたので着いて行こうと思って」
「じゃあボクも…」
「市丸隊長は仕事してください。浮竹隊長と俺の時間を邪魔しないでください」
「!?そんなに浮竹はん好きなん!?」
「はい。好きですよ」
流月を携えた翠は部屋を出るが、ギンが慌ててその後を追う。
「あんなオッサンの何処がええねん!」
「俺からしたらあんたも充分オッサンですけどね」
「ボクの方が付き合い長いやろっ」
その言葉に翠は立ち止まると、小さな溜め息を吐いてギンを見上げた。
「ハァ……付き合いの長さが好意に比例してる訳じゃ無いですよ。ようは自分にとってその人がどれだけ大切な存在かです。ただ付き合いが少し長い市丸隊長と浮竹隊長を一緒にしないでください」
「っ!」
遠回しにギンより十四郎の方が大切な存在だと言われてしまった。その事に大きな衝撃を受けたギンが普段は閉じている水色の瞳を見開いた。初めて見たその瞳を綺麗だと思いながらも、十四郎を待たせている事を思い出して、一礼して先を急いだ。
玄関先で十四郎と合流した翠は2人で瀞霊廷内を散歩に出掛けた。今日は2人共体調が良く、天気も快晴。絶好の散歩日和である。
「え?市丸隊長が来てたのかい?」
「はい。追って来ないので帰ったんじゃ無いですか?」
「うーん…」
話の内容までは話さなかったが、話を聞いた十四郎が顎に指を添えて考える。翠が女性だと知った上でギンの翠への気持ちを知っている為、追って来ないのを不審に思った。
(市丸隊長だったら着いて来ると思うけどなぁ。もしかしていつものようにキツイ事言っちゃったかな。追ってこなくなるくらいの…)
そう思うと少し心配になる。他人事ではあるが、少なからず自分も関係しているので、何か自分に出来る事は無いかと翠を見下ろす。その視線に気付いた翠が首を傾げる。
「?どうしました?やっぱり体調が悪いんですか?」
「ああ、いや。そうじゃない…………市丸隊長をあまり邪険に扱っちゃいけないよ?」
「何でですか?て言うか、少し邪険に扱ったぐらいでどうにかなる人ですかね」
「まぁ、そうだけどね」
何気に分かっている翠に苦笑いする十四郎だが、その頭にソッと手を乗せる。