デジモン 中編・長編

□1.信じろコノヤロー
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(…………Oh、神様…何でアンタはこんなに鬼畜なんだ…!)


少女は今、面白い状態になっていた。


ヒュゥ〜ッ…!


「…………あー………涼しいね…」


とあるタワーの頂上に立っていた。気付いたらここに居たのだ。何故かここに居たのだ。


足元は踏んでいるところがギリギリ両足が入っている程度。辺りを見ると、どうやら街外れの人が来る事の少ない通りらしい。人が一人も見付からない。


少女…吏門(りもん)柚袙(ゆずは)は、背中までの赤みがかった茶髪に、猫目の漆黒の瞳。


髪を靡かせて柚袙は溜め息を吐いた。


「ハァ………誰かぁ、助けてー………………なんて…独り言言ってみたり…」


誰かが答えてくれる訳でも、助けてくれる訳でも無いこの状況。普通だったらこの高さの場所に気付いたら居たってなると、慌てふためく人が普通だろう。


柚袙の場合はもう逆に有り得ない状況に冷静になってしまったのだろう。


「…………ん?………あれは…」


夜空を見上げていると、空に何かが見えた。目を凝らして良く見てみると、それは動いている。しかもこちらに向かって来ているような気がする。


(あーれはぁ…………………え?)


じっくり見て、その正体が分かった瞬間、柚袙は目を丸くした。未確認物体…否、未確認生物はもう直ぐそこ。


「フライモン!?」


ヒョイッ。


「あ」


フライモン、成熟期のウイルス型デジモン。フライモンが突っ込んで来るのを見て、反射的に避けると、自分の足元の事を忘れていたらしく、落下していった。


「さいっあくっ…!」


風に煽られて体勢を立て直すが、落下している故いくら体勢を立て直しても、死んでしまう。


(あー…マジ何でデジモンが現実世界に現れてんのかスッッッッゴイ不思議過ぎるんだけど………アタシ死ぬんだね☆)


内心もう助かるのは諦めた柚袙。すると視線を下に向けると再び…。


「今度はクワガーモン!?」


自分の落下地点…と言うか真下にクワガーモン、成熟期の昆虫型デジモンが。


どうやらクワガーモンはこちらに気付いていないようだ。しかし気付いていないと言っても危険だ。この落下スピードでクワガーモンに激突するものなら、バキバキに骨が折れるだろう。


しかし柚袙はもう吹っ切れた。デジモンがこうも連続で出て来ると…。


(もうこのままぶつかってやる…!!)


こう考えてしまうのだ。


ドッ…!!


衝突。と言うか柚袙は足から落ちていった故に、クワガーモンにダブルドロップキックをしてしまった。凄い音が聞こえた。


クワガーモンはそのあまりの衝撃に悲鳴をあげて傾いた。そのせいで柚袙はクワガーモンを通り越して更に下に落下。


(あ…もう死んだ)


下を見たら色々と駄目なような気がしたから死を覚悟で目を瞑った。数秒後にはもう体に大きな衝撃がきて死ぬだろう。


(…………あれ?)


いつになっても来ない衝撃に不思議に思って目を開けると…。


「しっかり掴まってろよ!」


代わりに来たのは温もりと柚袙に言っているのだろう言葉。柚袙が目を開けて目にしたのは、自分を抱えている見覚えのある少年。


(大門…)


大門(だいもん)大(まさる)…それが彼の本名だ。大は柚袙を抱えたままジャンプし、その勢いで悶絶しているクワガーモンに向かった。そして右拳を引き、クワガーモンを殴った。


ドガッ!!


デジモンを殴るなど有り得ないが、柚袙は驚かなかった。別の事には驚いているが。


大はクワガーモンを殴った事で拳にデジソウルが宿った。それを柚袙を上手く抱き抱えたまま、デジヴァイスicに…。
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