デジモン 中編・長編
□1.熱烈猛烈に
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「アグモーン!置いてくぞー?」
『待ってよアニキィ〜!』
あれから5年。デジタルゲートはDATS内で正常に機能している。以前のようにデジモンが人間世界に迷い込んで悪さをする事は減った。
デジモンが人間世界に居て、そのデジモンに悪影響を及ぼすと言うのも、5年前から薄れていった。そして今は人間界にデジモンが居る事は日常化してきた。
主に森や川などの自然の中。人間を怖がったり、怪しんだりするデジモンは少なくない。だから人間界に居ても、人間の前に姿を現すのは少ないのだ。
それでも、大達の努力もあって、デジモンも人間も互いに打ち解け合っていった。中にはパートナーデジモンが居る者も居る。
パートナーデジモンが出来た場合、DATSでの簡単な確認が必要。テーマーの簡単な個人情報(名前、生年月日、年齢、住所、職業程度)と、パートナーデジモンの情報をDATSのデータブックに保管する。
確認をするだけで、変にDATSに勧誘したり、強制的に関わっていく事は無い。勿論DATSに入隊希望の者は入隊しても構わない。
DATSに入れば、これが職業にもなる。勿論働かないと給料は貰えないが。主に、人間界に居るデジモンの現状調査や、デジタルワールドの定期調査。
人間界に居るデジモンの現状調査は、毎日やる日課であるが、デジタルワールドの調査は週1のものだ。それも、ある程度実跡を積んだ者を選んでだ。
トーマは研究を続けながら、淑乃はピアノ教室の先生をやりながら、そして大はデジタルワールドの管理全般を任されている。
そして今大はアグモンと共に街をパトロールしていた。デジモンを外に出しても周りは驚きもしないので、堂々と一緒に出歩ける。
路地裏への細道前に差し掛かった。奥から何やら罵声のような声が聞こえる。
喧嘩ごと大好きな大はパトロールと言う名目で取り敢えず見に行く事にした。奥へ進んで行くにつれて罵声が大きくなる。
物陰に隠れて様子を伺って見ると、身長の高い女性達に1人の少女が囲まれていた。全員制服を着ているのを見ると、高校生だと思われる。
少女はリーダーと思われる女性に胸倉を掴まれ壁に押し付けられていた。
(喧嘩か?やっぱ女もそう言うのあんだな。にしても…)
『1人に大勢なんて卑怯だねアニキ』
「!シッ。声大きいっ」
思っていた事をアグモンが言ったのもあるが、普通の声量で喋るものだから大はその大きな口を手で慌てて塞ぐ。
モゴモゴするアグモン。念を押し手を離してやると、小さい声で再び会話を続ける。
「確かな。1人に多勢なんて小せぇ奴等だぜ。図体はデカいがな」
『アニキ上手い!』
「別にそんなつもりで言ったんじゃねぇ!……見過ごす訳にもいかねぇし助けるぞ」
『さっすがアニキ!オレも加勢するぜ!』
「女なんだから殴んなよ」
『了解!』
そうと決まれば早速と、飛び出そうと一歩前に出て直後。
ゴッ…!!
「『?』」
鈍く重い打撃音が聞こえ、一瞬不思議に思うが、顔を上げた瞬間その正体が分かった。
目に映ったのは、大きく右側に傾く女リーダーと華麗な回し蹴り、そしてレースを施された純白のパンツ。
「『白だ……あ』」
思わず声に出てしまった大とアグモン。顔を見合わせ再び少女達に視線を戻した。