混合小説 中編・長編

□3.仲間達
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「六幻まだ直んないの?」


「…ああ」


早朝。今リンネと神田は稽古場に居る。先程まで剣術勝負を長々としていたが、今は一時の一服。


方舟内でのノアとの戦いで装備型のイノセンスを負傷したラビと神田。どちらもイノセンス本体は壊れていないので修復可能なのだが、以前の形に戻すのには時間がかかるようだ。


「早く直ると良いね。いざと言う時戦えないし」


「ハッ…六幻がなくとも俺は戦える」


「あっそ。AKUMAの毒にやられないからって無茶すると本当に死ぬよ」


「そんなヘマはしねぇ」


そっぽを向いた神田は水の入ったボトルを置くと立ち上がった。


「ねぇ」


「あ?」


振り返り体育座りをしているリンネを見下ろす。


「AKUMA生成プラント…あれがないとAKUMAを生成出来ないって事はさ…あのクソデブ、何らかの方法で取り返しに来るだろうね」


「!」


その言葉に目を見開く。


「プラントはこの本部にある……もしかしたら来るかもね。ここに」


リンネの言うとおりAKUMA生成プラントが無ければ新たなAKUMA達を生成する事は出来ない。千年公のシナリオを進めて行くにはAKUMAの存在は必要不可欠。


本部からプラントは出せないし、今科学班が分析解析している。どの道本部から身動きがとれない状況。


「この可能性はお前も考えてたんじゃ無いの?それでも、今は皆が傷を癒やす時だから気持ちが緩んでる」


「…テメェはずっとそれを考えてたのか」


そう問われリンネは神田を見上げると立ち上がった。


「少なからず考えてたよ。クソデブにとってプラントの存在は結構重要だからね」


「…その物言いだと、あのヤローと面識があるのか」


「ん。一応ね。色々と邪魔してた。方舟転送の時も邪魔してやろうと思ったけど、お前達が頑張ってるのに水を差すのも悪いと思ってね。それに何気クソデブに目つけられてるから、私が出たらクソデブが出てきてややこしくなるかもしんないでしょ?」


淡々と言うと神田の左胸に右手を添えた。


「何だ」


「稽古に付き合ってくれたお礼に神田に加護をあげる」


そう言うと同時に右手が水色に光り出した。それは神田の体を包み込んだ。


「“君臨者よ。皮肉の仮面、万象、羽ばたき、人の名を冠す者よ…神田ユウ、神の子に加護を”」


言葉の終わりと共にリンネが目を瞑ると、ゆっくりと光は左胸に…つまり心臓に吸収されていった。


全ての行程を終えると、目を開き右手を下ろした。光が吸い込まれた付近を触れる神田は不思議と稽古後だと言うのに先程の疲れが消えていた。


「今のは…」


「疲れがとれたでしょ?神田に与えた加護は、リラックス効果があるの。だから、もし混乱してもすぐに落ち着いて対応出来るよ」


「そんな事も出来るのか」


「うん。あと序でに、ピンチの時に発動するシールドもちょこっとだけ。今はリラックス優先だから」


リンネの気遣いが感じられる。だが逆に神田に疑問を抱かせる。


「お前、全てがどうでも良いとか言いながら何故俺に加護を授ける。世界がどうなっても良いのなら、俺の身を案じるような事なんかしなくとも良いだろ。面倒なだけなんじゃねぇか?」
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