BLEACH 中編・長編
□3.数十年前B
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安杏の生まれたての小鹿状態を見てもツッコミが出来るならと笑っている翠。思わずその腰にすがりつく杏。
「助けてよぉ!壺府さんはもう殆ど死んでるし、私は生まれたての小鹿!あと10枚運ばないといけないのに2人共瀕死の重症だよぉ〜っ」
「お前は中傷だろ。1人でやれ」
「え〜っ!?なんて薄情なっ!」
「俺は忙しい」
「そこをなんとかぁ〜っ!!」
何がなんでも離れないと抱き着いて引き留める。「うざってぇ」と思いながらその頭にアイアンクローをかますと悲鳴をあげた杏。するとそんな2人に近付く人物が。
「良いじゃないか、杞宮君。君ならすぐに片付けれるだろう」
「藍染隊長…」
五番隊隊長藍染惣右介。優しげな雰囲気を纏う知的な男性だ。古株で、信頼が厚い。
「早かったですね」
「ああ。早く用事が終わってね」
どうやら十二番隊に用事があった2人だったが、惣右介の方が用事があったらしく、翠は先に来ていたようだ。早く用事が終わったと言う惣右介は、やんわり杏の頭を未だ掴んでいる翠の手を取った。
「でも…仕事終わった後行く店予約してるんですよね?」
仕事が終わった後、夕飯に惣右介が予約した飲み屋で食事をするようだ。妙な事に時間を取る暇は無いと翠は思うが、惣右介は翠ならすぐに終わると言う。翠の問い掛けに惣右介はニコリと笑みを浮かべる。
「大丈夫だよ。遅れた分は2人で処理すれば直ぐさ。それに、討論している時間も勿体無いと思わないかい?」
「…そう、ですね……分かりました」
最もな事を言われ、少しムッとするが素直に頷いた。その返事に惣右介は優しい笑みを浮かべ翠の頭を優しく撫でる。
「ふふ。僕も手伝うよ」
「俺1人で大丈夫です。直ぐ終わらせます」
そう言って惣右介の手をやんわり下ろすと、杏を連れて地下へ。ただ待っているのも暇だからと惣右介もついて来た。部屋の中へ入ると杏から聞いた重さ120kg以上ある鉛の板を軽々と持ち上げ、1枚ずつ台車に乗せた。
かかった時間2分。杏が1枚乗せる時間より遥かに早い。力持ちなのは知っていたがここまでとは驚きだ。因みに普通の台車だと500kg以上はギリギリだが、技術開発局の台車は特別性なので1400kgまで大丈夫だ。他にも色々耐久性に優れた物が多い。
「ほらよ。どうせ涅隊長に会いに行くから下ろすのはやってやるけど、押すのはお前がやれ」
「あ、ありがとう」
一切疲れた様子の無い翠。3人でマユリの居る研究室に向かった。研究室の中へ入ると、何かの機械の内部を作っているマユリと技術開発開発局副室長であり第四席の阿近が居た。阿近は翠と惣右介が取りに来た物を取りに一旦居なくなった。マユリは振り返ると首を傾げた。
「随分と早かったじゃないカ、柴木。そこの2人にでも手伝ってもらったのかネ?」
「は、い。翠に…」
「杏がやったら1枚に1時間かかりますよ」
「それは盛り過ぎじゃない!?」
流石にそこまでかからないと言う杏。そこで丁度大小違う箱を2つ持って阿近が戻ってきた。大きいのを翠に、小さいのを惣右介に渡した。
「杞宮の方は使ってみてから調整が必要だから1週間後にまた来てくれ。藍染隊長の方はその必要は無いので何か不備があった時にでも」