BLEACH 中編・長編
□4.旅禍の少年
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「こらこら。何翠クンの胸ぐら掴んでんねん。乱暴な子供やなぁ」
経緯を見守っていたギンだったが、手を出すならと、取り敢えず一護から翠を離し3歩下がった。抱き抱えられてしまったので、無言でギンの溝内に肘を食らわせ腕が緩んだ所で地面に足を着く。そして再び一護達に向き合う。
「あの時自己紹介してなかったね。俺は杞宮翠。三番隊第三席だよ。この狐顔の市丸隊長の下で仕方無く働いてるんだ」
「え。仕方無くって初耳なんやけど」
「おっと口が滑った」
「辞めんといて…!」
わざとらしい翠の発言にギンはワッと後ろから押し潰すように抱き着く。一瞬鬱陶しそうに顔を歪めたが放っておいた。すると一護が再び翠に近付きルキアの事を話した。
「ルキアはアンタの仲間だろ?助けてやってくれねぇか!」
一護の言葉に翠は一拍間を置くと…。
「それは無理」
「!何でだよっ」
表情を変えずに返した翠。
「幾らルキアが俺達の仲間でも中央四十六室が決めた事は覆せない。処刑って言われたら処刑は決定事項だよ。ルキアは友達だから処刑されるのは嫌だけど」
「だったら何で何もしねぇんだよ!友達ならっ、嫌ならっ、助けたいって思うに決まってるだろ…!!」
「誰でもお前らと同じ思いを持ってると思うなよ、クソガキ」
-っ!!
直後、翠の霊圧が跳ね上がった。咄嗟に距離を取った一護と、身構える織姫達。そんな中夜一は翠を観察するように目を細めた。
(こやつ…三席と言ったが、この霊圧からしてまだ実力を隠しているな……一護は顔見知りのようだが一筋縄ではいかない…………それに…何処かあやつに似ているような…)
ジッと見詰める夜一は一体誰を思い出しているのか。そうこうしている内に翠がギンを前に出さないように更に前へ出た。
「翠クン、ボクが片付けるさかい、下がっててええよ?」
「馬鹿言わないでください。こんなガキ共俺だけで充分ですよ。1発で仕留めます」
ゾッーー!!
「っ!!皆下がるんじゃっ…!!」
言葉と同時に翠が右手を一護達へ翳した。膨大な霊圧を瞬時に察知した夜一が下がるように言うが、1歩遅かった。
「破道の七十七・双蓮蒼火墜」
ドッーー!!!
兕丹坊をも飲み込む青い炎に一護は辛うじて斬月で防ぐ事しか出来ず飲み込まれ、白道門の外へ吹き飛ばされた。兕丹坊が支えていた門は当然閉ざされ、閉じる瞬間に翠とギンが手を振るのが煙の中からうっすら見えた。
一護達を門外へ吹き飛ばした後、翠とギンは隊舎へ戻る道を歩いた。
「あれでまだここに来る気でいれるなら、本当に大きくなったもんだ」
1度だけ会った少年だったが、酷く懐かしそうに口許を緩める。その様子にギンはムッとする。
「ボクの方がおっきぃよ?ボクの方がカッコエェよ?あの子ぉの何処がええねん!」
「いや、何処が良いとか格好いいとかじゃなくて、単純に大きくなったなぁと……それにギンの方が格好いいよ」
「!あ〜!もうっ。幼馴染みの枠飛び越したいんやけど…!!」
「それは無理」