BLEACH 中編・長編
□7.灰色の空
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昨晩19時頃、冬獅郎は翠の部屋を訪れていた。その理由は直ぐに察せられる通り、事の全ての疑いを翠がかけられているからだ。その真相を知るべく冬獅郎は直接本人に聞きに行った。
「いい加減正直に答えたらどうだ」
「何言ってんの。俺はいつだって正直だろ?俺じゃ無い」
お互い着流し姿で少し距離を置いて話し合う。翠の部屋はもとは殺風景だったが、ギンが私物を置いていったり人形を買ってきてプレゼントしてきたりするので、今や賑やかな部屋になっている。
翠はセキセイインコの人形を抱き締めながら冬獅郎と向かい合っている。たまに翠が人形を投げてきたりするが全てキャッチして適当に置いている。
翠の言葉に冬獅郎は目を細め、次の問いをした。
「……市丸か?」
「さぁ。見た目だけなら普通に怪しいよね」
「真面目に答えろ。同じ隊で仲が良いってだけでそこまで庇う義理はあるのか?」
「義理ねぇ…」
翠は少し考える素振りを見せると、少し笑みを浮かべた。
「義理なんかじゃ無いよ。あんな面倒くさい奴義理なんかで構ってられるかよ。単純に、市丸隊長が義理なんかで収まらない存在だから一緒に居るんだよ」
「!」
「ホント…しょうがない奴だよ、アイツは。どれだけ邪険に扱っても傍に居ようとするんだから…」
そう言う翠は呆れたような口振りとは裏腹に何処か嬉しそう。それだけギンの存在は大きいと言う事だろう。それが冬獅郎にも伝わってくる。
「…市丸は殆ど黒だ。いずれ切る」
「その時は俺が市丸隊長を守る」
「……それがどう言う意味か分かって言ってんのか?」
「俺が分かってないでこんな事言うと思う?」
「……今俺がここでテメェを捕らえても良いんだぜ」
霊圧を上げる冬獅郎を真っ直ぐ見詰める翠。数秒無言が続くと、冬獅郎が本気だと感じ取った翠が徐々に霊圧を上げていった。そして先程までの笑みが一変して鋭い眼光が冬獅郎を捉える。
「そっちが本気ならこっちも本気にならなきゃなんないな。いくら日番谷でも市丸隊長に手を出すってなら許さない。ここで、仕留める」
翠から今まで感じた事の無い敵意が重く霊圧となってのし掛かる。2人で修行をした事は何度もあるが、こんなにも本気な翠は初めてのような気がした。
斬魄刀…氷輪丸の柄を握る。翠は手をかけてないにしろ手の届く範囲に流月がある。抜刀速度に自信がない訳では無いが、言い様のない圧迫感に冷や汗が一筋流れる。
数分の睨み合い。先に動いたのは翠だった。動く気配に来るかと思いきや、高めていた霊圧を一気に消し、また寝転がりリラックスし出した。
「冗談だよ。そんな身構えなくても何もしないって」
「…………」
少し警戒するが完全に殺気が消えた事でこちらも霊圧を抑えた。依然険しい表情の冬獅郎だが、翠は気にしていない。
「どこまでが冗談かはそっちが勝手に決めて良いよ。人によって捉え方は違うからね」
「……全部本気だろうが」
「さぁ、どうだろ」