デジモン 中編・長編

□2.再び災難
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ガッシッ…!


「…っ」


一人分の息を呑む声が聞こえた。それは柚袙で、大にいきなり左側から肩を組まれたから驚いたのだ。


身長が淑乃より大きく、肩を組んでいる事でいつもより断然に密着度が増しているのに緊張が走る。


「トーマ、お前俺を試しているんだろうけどな…俺にだって口説く事ぐらい出来るんだぜ?」


そう言って左手で柚袙の顎を少々乱暴で不器用だが、痛くないように自分の方へ向かせた。


「え?…え??」


いきなりの急接近と大の行動に混乱する柚袙。頬を赤く染め、まだ幼さの残る純粋な目で真っ直ぐに見詰めてくる大の、僅かに出ている大人の雰囲気に呑まれた。


思わずトーマ達にも緊張が走り息を呑んだ。


「なぁ…今暇だよな。こんなところでトーマなんかと居ねぇで俺と良い事しねぇ?トーマなんかと居るよりぜってぇ楽しいぜ。損はさせねぇ。だから黙って俺に着いて来いよ」


「っ…!」


真剣に言ってくる大に先程よりも顔を真っ赤にした柚袙は目を回す勢いだ。そして…。


「…………って感じのテレビのナンパヤローが言ってたんだよなぁ!」


ガクッ…!


左手を話して笑って顔を上げた大に柚袙以外ずっこける。


「君が考えたんじゃ無いのかい…」


「まぁ…大がこんな事考えれる訳が無いしね」


『確かに…』


「んだとぉ?」


拍子抜けしたトーマ達は大を馬鹿にする。すると先程から一言も喋らない柚袙に気付いた大は、肩を組んだまま俯いている柚袙の顔を覗き込んだ。


「どうした…?」


「………………か………ろ…」


「?」


ヒュッ…!!


「ウオゥッ!?」


アッパーの如く放たれた拳をギリギリでかわした大。柚袙は二歩後ろに後退り、まだ赤い顔でキッと睨み上げて来る。


「大門の馬鹿!!行動が突発的過ぎっ!てか、何でアタシにやったのよ!!」


「え?いや、だって近くに居たし…」


「それだけの理由!?淑乃さんにすれば良いじゃない!!」


「淑乃はなぁ……なんかなぁ…」


「ちょっと大!私が何よ!?」


『よ、淑乃落ち着いて…』


淑乃まで怒り出しそうになるのをララモンが止める。しかし柚袙の怒りは止まらない。


「ちゃんと人は選んでやってよね!!」


「選んでやったらこうなったんだよ。二人しか居ねぇし」


「だったら予告ぐらいしてくれたって良いんじゃない!?」


「おお、ワリィワリィ」


「っ…………もう、良い。パトロール行ってくる」


「お、おい…!」


背を向けて歩き出した柚袙の腕を咄嗟に掴む。


「離して変態!!」


「変態ぃ!?」


『アニキ待ってよ〜!』


「ぐぅっ…なんて力だ…!」


ズルズルと引き摺られて行く。出入口の前まで来ると、腕を振り払われた。そして振り返ると叫んだ。


「大門なんて…大門なんてっ…ダイッキライ!!無神経野郎!!アタシの半径10m以内に近寄らないで!!グシャグシャドロドロボロボロになって永遠と家に辿り着けなくなっちゃえば良いんだ…!!」


そう吐き捨てて出て行ってしまった。慌ててその後を大とアグモンは追う。既に廊下には柚袙の姿は無く、出口まで行くが居なかった。すると後ろから声をかけられた。
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